文春オンライン

稲本、玉田、前田……なぜ日本サッカーの功労者たちは次々に「戦力外」となるのか

2018/12/17

「労いの言葉がなくてガッカリ」と玉田

 シーズン中盤から後半、チームに貢献した玉田は「あまりにも突然のことだったので頭を整理するのに少し時間がかかりました。契約しないと伝えられた時には労いの言葉がひとつもなかったのにガッカリしました」と、やるせない胸の内を語っている。こうした発言が出てしまうと、クラブの姿勢が問われることになる。クラブを一時期でも支えてくれたベテラン選手にリスペクトを欠いた対応をしてしまうと、既存の選手のモチベーションにかかわるし、今後、新しい選手を獲得する際に少なからぬ影響を及ぼすことになる。

2017年に名古屋に復帰し、J1昇格の原動力となった玉田圭司 ©文藝春秋

「今は名前だけで生きていけない。ベテランはいつも試合に出れている場合はいいけど、ベンチにいると試合出場が不規則になりがち。コンディション調整が難しくなるけど、試合に出た時に違いを見せれば評価されるし、それを継続して存在価値を高めることが生き残る道かなと思う」

 来年1月に39歳になるガンバ大阪の遠藤保仁は、ベテランが生き残るための術を、そう語る。

ADVERTISEMENT

 ベテランがチームに生き残れるのは遠藤のように監督に信頼され、その存在感がチーム内に及ぼす影響が大きく、結果でチームに貢献している場合だけだ。だが、これはベンチを温めることが多くなるベテランにとってはハードルが高く、厳しい。今回の玉田や山瀬のように「ある程度の活躍」では更新が難しくなっている。

DAZNの参入がベテランの逆風に?

 また、DAZNの参入で理念強化配分金などクラブに新たな収入が増えたこともベテランへの逆風になっている。以前はチーム状態が厳しい時、ベテランに頼ってなんとか凌いでいたが、今年はシーズン中に若い選手を違約金を払ってでも獲得するようになった。FC岐阜から神戸に移籍した古橋亨梧、山口からガンバ大阪に移籍した小野瀬康介などがそうだ。この傾向は来シーズンもつづくだろう。そうなるとますますベテランの出番は少なくなる。

 さらに来シーズンからJ1では試合にエントリーできる外国人枠が5名に広がることになった(登録は無制限)。なお、Jリーグがリーグ間提携を結ぶ提携国(タイ、ベトナム、ミャンマー、シンガポール、カンボジア、インドネシア、マレーシア、カタール)の国籍の選手は外国人に含まれない。こういう流れもベテランが生きにくいリーグになってきている要因のひとつだ。(注1)