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稲本、玉田、前田……なぜ日本サッカーの功労者たちは次々に「戦力外」となるのか

2018/12/17
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稲本は「正直、やめる理由がない」

「まだまだできるのにやらずに終わるのは自分の中で納得できないし、まだ燃え尽きた感もないんで」と稲本はいう。ペトロヴィッチ監督は、レギュラーを固定し若さを基準として起用するので、その枠から漏れるとほぼノーチャンスになる。今回契約満了になった河合は出場試合ゼロ、稲本はわずか2試合しか出場していない。これではすぐにやめられないだろう。稲本は、「正直、やめる理由がない。新しいチームでは既存の選手と競って、試合で自分の力を出してチームに貢献したい」とやる気をたぎらせている。駒野も「まだ、サッカーをしていたいので」と現役への意欲を示し、他選手も同じ気持ちだ。

 さいわい、来シーズンはJ1、J2、J3ともに監督人事が動いている。特にJ2では長崎が手倉森誠監督、大宮は高木琢也監督、京都が中田一三監督、甲府は伊藤彰監督、岡山は有馬賢二監督が誕生し、柏はネルシーニョ監督、福岡はファビオ・ペッキア監督、東京ヴェルディはギャリ―・ジョン・ホワイト監督が新たに誕生し、ベテランが必要とされる可能性がある。

Jリーグ通算174得点の前田遼一、今季は1ゴールに終わった ©文藝春秋

ベテランの力を必要とするチームはまだある

 戦力が薄いところもチャンスがある。

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 J1昇格組の大分は選手層が薄く、片野坂監督が欲する要素を持つ選手であればベテランでも必要とされるかもしれない。J1残留争いに苦しんだ鳥栖もまとめ役がいなかった。チームが窮地に陥った際には、ベテランの背中や言葉がチームをひとつにし、乗り越える力にもなる。神戸は残留争いに陥った終盤戦、ベテランの伊野波雅彦(33歳)に救われた。2連覇を達成した川崎の中村憲剛(38歳)、20冠を達成した鹿島の小笠原満男(39歳)、広島の青山敏弘(32歳)のようにベテランが元気なチームはしぶとく、強い。ベテランをうまく活かせるチームは大崩れせず、タフに戦えるということだ。

 今回、惜しくも契約満了になったベテラン選手は、少々条件や環境が悪くてもプレーを続けて欲しいと思う。好きなサッカーをやれて給料をもらえる環境はJリーグしかない。やめることは簡単だが、やめるともう現役には戻れない。科学的なトレーニングや身体のケアが発達し、今の30、40代は10年前のその世代とは異なる。来シーズン、「まだやれるぞ」とおっさんの存在価値を見せつけ、サッカーは年齢でするものではないことをピッチで証明してほしい。

(注1)来季J1の外国人枠変更の説明に関して、一部誤りがありました。お詫びして訂正いたします。(12/17 19:15)

稲本、玉田、前田……なぜ日本サッカーの功労者たちは次々に「戦力外」となるのか

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