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スタイリスト・北村道子69歳「ゴミ箱を漁って見つけた学ランを内田有紀に着せた日」

映画衣裳の大御所に異色の人生観、映画観を聞く

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「相当パラダイスな洋服作れるんだけどな」

――もう40年以上スタイリストのお仕事をされているわけですよね。以前、「遊びがないとクリエイションに繋がっていかない。30歳まで遊び尽くしたから映画の仕事ができた」とおっしゃっていましたが……。

北村 冗談で、「来年70歳で70年の蓄積があるから、相当パラダイスな洋服作れるんだけどな」って言ってるんだけど(笑)、送られてくる脚本はわたしの好みではない。

 

 日本において、映画の衣裳をやるのはすごく難しい。わたしはリドリー・スコットや、ミヒャエル・ハネケの映画が好きなんだけど、彼らには思想や哲学があって、それを映画という媒体に置き換えているわけじゃない。

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想いは変わらず、形を変えて表現していく

――では、今後はどういったお仕事をされるのですか。

北村 サイエンスファッション。SFで、ファッションを何か入れるのをずーーっとやりたいんです。

衣裳術2』のカバーで、門脇さんがつけているスケルトンの手袋は、私の主治医にお願いしてもらったんですよ。メスはさすがにあげられないって言われたから、ハサミを持たせて我慢したんだけど。

 わたしの頭の中では、自分と意見が合わず、科学者である両親の実験室に入って、実験用のハツカネズミをハサミで殺してしまう、っていうストーリー。

――やっぱりぶっ飛んでいます。

 

北村 あんまりわかってもらえないんですよね。あと、わたしもあんまりわかってない。突然「え?」って聞いたりするじゃない。「えっ北村さん理解してないの?」「いや、それとまったく違う理解をしてた」って。

 でも、最後には着陸してるんですよね。むかしから仕事している俳優には、「変わってないね、70歳になっても」って言われてますが。想いはいつでも変わらずに、形をかえて表現していますね。

 

撮影=末永裕樹/文藝春秋

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