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読売新聞「値上げ」から考える“新聞配達留学生”の見過ごせない問題

読売新聞「値上げ」から考える“新聞配達留学生”の見過ごせない問題

「丸佳浩の巨人入り報道」の日の衝撃と

2018/12/21
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もはや「偽装留学生」と告発する理由は

 発端は朝日新聞の奨学生受け入れであった。さらに注目すべきは留学生の「違法就労」だ。留学生のアルバイトは「週28時間以内」に収める必要があるが、出井氏は次のように書く。

《筆者は過去4年間で、50人以上のベトナム人奨学生にインタビューし、彼らの新聞配達への同行取材も2度行った。結果は、「週28時間以内」で仕事を終えている者などひとりもいなかった。》

 うーーん……。

 他の全国紙の販売所でも留学生アルバイトが急増中であり、違法就労を強いられる留学生が少なくないという。もはや「偽装留学生」であると。

朝日新聞社 ©︎文藝春秋

 記事の締めは、

 《全国紙は、実習生に対する「人権侵害」を頻繁に報じる。一方で、偽装留学生問題を無視し続けているのは、配達現場の違法就労問題があるからなのだ。》

 日本の新聞を支える宅配制度にはこんな現実があったのだ。


 ここで今回の読売新聞の値上げ理由「戸別配達網を維持」「人件費や輸送費上昇」があらためて頭をよぎる。つまりこれは読売だけの話でない。値上げに関しても、他紙も今後足並みをそろえてくることが予想できる。

 ゲンダイ師匠の今回の特集は外国人労働者問題と新聞の宅配制度がつながっていることを指摘した。

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宅配制度が抱えている「闇」

 ここで私は以前自分で書いたものを思い出した。新聞の軽減税率についてである(増税されても一般紙は日用品扱いで8%のまま)。

「定期購読で週2回以上発行される新聞」が軽減税率を適用されることについて思うところを書いたのだ。

《何か思いませんか。駅売りで買う限り、『東スポ』、『日刊ゲンダイ』、『夕刊フジ』などの夕刊紙、タブロイド紙は軽減税率の対象外なのだ。タブロイド紙は除外されており、『日刊ゲンダイ』はそもそも雑誌扱い。軽減税率の対象は当初「新聞・雑誌」といわれていたが、いつのまにか新聞だけになっていた。》(「軽減税率を各紙はどう報じたか」『芸人式新聞の読み方』幻冬舎より)

読売新聞主筆・渡辺恒雄氏 ©︎文藝春秋

《ああ、新聞界でもこんな差別が発生している。「民主主義を支える基盤だ」と言うならどの新聞も平等ではないか。「税率を高くする新聞、据え置きの新聞」の差があってよいのだろうか。必要な情報、必要じゃない情報はお上が決めるのか?不自然ではないか。『朝日』『読売』『毎日』はこの理不尽を見て見ぬふりでよいのか。噛みつかないのか? 『東スポ』『日刊ゲンダイ』『夕刊フジ』の逆襲がみたい。》(同上)

 以上は昨年出版した本に書いたものだが、今回ゲンダイは一般紙の宅配制度の「闇」に見事に噛みついたと言えまいか。

 それにしても新聞社は資金が潤沢でお金持ちだと思っていたが、宅配制度を保つには大変な時期に差し掛かっていることが「値上げ」と「留学生」の記事を読み比べたらわかったのである。

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