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アジアカップの“ド本命”日本代表 「それでもキツい」優勝への3条件

過去4度の優勝から学べることとは

2019/01/05
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(2)PK戦にも動じない「ゴールキーパー」

 日本はここ4大会連続でPK戦を経験している。負けたのは前回のオーストラリア大会UAE戦のみ(※)。最も有名なシーンは、言うまでもなく川口能活の神懸かりセーブとして伝説になった04年中国大会の準々決勝ヨルダン戦(1-1 PK4-3)だ。

 説明は不要だろうが、おさらいの意味で振り返りたい。先攻の日本は1本目の中村俊輔、2本目の三都主アレサンドロが続けてピッチに足を滑らせてキックミスしたことから、宮本恒靖キャプテンが主審にエンドの変更を要請して、それが認められた。日本はそこから2人が成功、一方のヨルダンはここまで3人が成功していて、この4人目が決めれば日本の敗退が決まるという状況であった。

 川口に神が宿る。

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 その4人目のキックを左手で弾き、5人目はゴール左に外させる。これで3-3。サドンデスに入って日本が失敗し、再び嫌なムードが流れるなかで川口が右手で弾く再びのビッグセーブ。7人目でようやく日本がリードし、逆にヨルダンのキッカーがゴールポストに当てたところで日本の勝利が決まった。

 のちに川口に、このPK戦のことを聞く機会があった。

「1本止めたら、流れは変わるなと思っていました。プレッシャーが懸かる試合であればあるほどそうなりやすい。ヨルダンは勝てば初めてのベスト4進出で、日本は過去2回の優勝経験ある。1本止めたら、プレッシャーが強くなるのはヨルダンのほうだと思っていました」

2004年の「奇跡のPK戦」。3人目を終えて1-3とヨルダンにリードされたが、川口能活のビッグセーブ連発で劇的勝利 ©ALFO

 まさに4人目のキックを止めたビッグセーブで流れが変わり、ヨルダンは目の前にいる川口、そして目に見えないプレッシャーと戦わなければならなかった。もちろん日本には優勝に向かうプレッシャーはあるものの、打ち勝って優勝にたどりついた経験値がある。川口自身、4年前にレバノン大会で優勝に貢献しており、追い込まれた状況であっても落ち着いていた。

 今回、経験豊富な川島永嗣は外れたとはいえ、権田修一はカタール大会、東口順昭はオーストラリア大会のメンバー。先輩たちの教えが彼らのなかで受け継がれているはずで、PK戦までもつれたら再び、ゴールを守る神が降臨するかもしれない。

※ただし、07年大会の3位決定戦では韓国にPK戦で5-6と敗れている。