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シューズで見る箱根駅伝2019 「ナイキ ヴェイパーフライ」はなぜここまで広まったのか

シューズで見る箱根駅伝2019 「ナイキ ヴェイパーフライ」はなぜここまで広まったのか

2019/01/10

ナイキのプロモーション戦略の変化

 ナイキは箱根駅伝のレース中に、それぞれの区間で何人の選手がヴェイパーフライを履いていたかを、ほぼリアルタイムで配信していきました(http://nike.jp/ekiden/pc.html)。これまで特定の選手にしか提供しなかったシューズを、何人が履いたと発表したことで、ナイキは今年は物量でアピールするプロモーションへとシフトしたのではないか、そんな予想が成り立つわけです。

ヴェイパーフライを履けば誰でも速くなるの?

 ではヴェイパーフライを履けば誰でも速く走れるのでしょうか? そうとは言えません。

 今年の箱根駅伝は、ヴェイパーフライで良い結果を出すために以前から準備してきた選手と、そうでない選手に分かれた年とも言えます。ヴェイパーフライは履きこなすのが難しい、ヴェイパーフライに適した走りが求められるシューズです。「ナイキ ヴェイパーフライ 4% フライニット」の定価は28080円。推奨距離が200km弱ということもあって、価格、耐久性がネックとなり、普通の大学生が何足も履き潰せるシューズではない。そういう裏事情もあってか、今回もおろしたてのEKIDEN PACKで箱根を走り、うまく履きこなせていない選手がいたことも事実。昨年12月の福岡国際マラソンで走った設楽悠太選手や服部勇馬選手の足元には最新のナイキ ヴェイパーフライ 4% フライニットではなく、旧カラーのヴェイパーフライであったことからも、彼らほどのトップ選手であっても、準備が必要であることがうかがいしれます。

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 そんななかで着々と準備をしてきたのだろうと思わせる選手が、6区に2人いました。1人は東洋大学の今西駿介選手。彼は昨年も6区を走りましたが、多くの選手がヴェイパーフライを履く東洋で、走りと靴がフィットしなかったそうで、ナイキのストリークシリーズを履いていました。そんな彼が今回選んだのはアッパーがフライニットではない、ヴェイパーフライ。しかもチームカラーの鉄紺です。チームカラーのヴェイパーフライは以前のモデルなので、これを履いているということは、彼がいかに練習を積み、準備してきたかの証明といえるのです。

東洋大6区・今西選手(左)はチームカラー“鉄紺”のヴェイパーフライ

 もう1人、東海大学の6区で快走した中島怜利選手は、昨年に続いてヴェイパーフライですが色は東海ブルー。新製品に飛びつくのではなく、旧モデルできちんと準備をして、この日のために取っておいたモデルを履いたのでしょう。

東海大6区・中島選手は東海カラーのヴェイパーフライ