文春オンライン

強い中国の“コワすぎる”側面――台湾の空港内で暮らす亡命中国人の「独占手記」

“謎の中国人スパイ”から逃げてきた元共産党員

2019/01/10
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「密入国したタイから脱出しなければいけなくなった」

 この時期は、雲南省の景洪市で密航者幇助罪の名目で逮捕(2018年2月)されていた人権運動シンパの張磷の裁判が開かれようとしており、弁護士によれば証拠不十分なので当局側は証人になる関係者を捕まえようとしているとのことでした。

 私と劉はいずれもこの張磷の助けを得てタイに亡命しています。もし、私たちが逮捕されて中国国内に送還されれば、張磷の裁判の有力な証人にされてしまいます。なので、中国共産党当局の私たちへの追跡が、非常に大々的におこなわれるようになったというわけです。

 また、劉の体調問題もありました。彼は2015年に中国国内で9ヶ月間投獄されてから非常に健康を損ない、副腎腫瘍・糖尿病・高血圧などの疾病に悩まされ、行動も大変です。タイはすでに非常に危険で、もはやとどまり続けることはできないと考えました。

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 これらの理由から、私たちはタイからの脱出を決めました。とはいえ、私はタイに密入国していますから、パスポートはまだ有効ではあるもののタイの入国スタンプが押されていません。そこで地元の旅行会社を通じて、なんとかタイに正式に入国したことにして、パスポートを合法的に使用できる状態に戻しました。

台湾の桃園国際空港 ©iStock.com

 中国のパスポートを持つ私たちが自由に行ける国は非常に少ないうえ、そうした国家の多くは中国との関係が良好なので、私たちが渡航してもまったく安全ではありません。しかし、台湾ならなんとかなるのではと考え、逃亡先に選ぶことにしました。

 空路で(当該国への渡航ビザがなくとも)第三国に出る方法も発見しました。バンコクから台湾を経由して北京に「帰国」するチケットを買い、台湾側の空港で北京行きの飛行機を故意に乗り逃せば、ひとまずタイを脱出して中国にも戻らないことは可能になるのです。

 こうやって台湾に到達して、その後のことは現地で考えていく、難民として別の第三国による救援をあおいでいくという計画です。