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平成の終わりに考える ZOZO前澤友作さんは花火師か、あるいは思想のある経営者か

100万円さえ当たってくれれば良かったのになあ

2019/01/10
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単に豪運な成金で終わらない経営者としての奥深さも感じる

 企業というのは、多かれ少なかれその経営者の考え方や人間性が前面に出るもので、社風が固まってコーポレートイメージが事業全体を彩らせていく部分があります。前澤さんというのは社員のためにユニークな評価制度として社員に払う給料を極力均一にして競争をなくそうとしたり、率先して1日7.5時間労働で週休3日も可能としたり、単に豪運な成金で終わらない経営者としての奥深さも感じるわけですよ。

 一方で、超実力主義的な田端信太郎さんをLINE社から引き抜くような形でZOZOのイメージ戦略のかなめに置いていて、どちらかと言えば理想主義的なフラワー体質の前澤友作さんと、マッチョ思想の具現者である田端信太郎さんが前のほうにドーンと出ているのは興味深いわけです。どちらも優秀だと思うけど、思想だけ見れば正反対じゃね? 態度を見ればどっちも説教臭い目立ちたがりという点では共通しておるわけですが、私としては100万円が外れて最高にムカついていることを除けば「これでどこまでやっていけるんだろう」という気持ちにもなります。

©iStock.com

「前澤流の急成長の終わり」を暗示させる部分がある

 惜しむらくは、前澤個人商店の延長線上でZOZOが終わらないといいなあと思うところで、ZOZOの高収益を生み出す仕組みがどこまで持続できるかがハッキリしない以上、単なる話題作りでZOZOが各種メディアに取り上げられただけでは花火師で終わってしまいかねない部分はあると思います。夢を大事にする、何かにすぐに取り組んでいく強さを前澤さんが持っていたとしても、ZOZOがいまあるビジネス上のリソースや、作り上げたブランドを土台にして第二第三の高収益事業を築いていける状況にはありませんので、株価がなかなか冴えなくなっている理由も「前澤流の急成長の終わり」を暗示させる部分があるのではないかとは感じます。

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 世界的に穏やかな景気拡大があり、一方で、人口減少や生産性の低迷で日本社会が中国との競争に負けていく中で徐々に国富を失っていったのが、平成の30年間でした。そんなを平成時代を象徴するような緩やかな衰退を伴う「食える閉塞感」を、100万円の夢をみんなに持たせることで打破しようとしているZOZOってのは面白い会社だなあ、100万円さえ当たってくれれば良かったのになあと思わずにはいられない新年でした。

平成の終わりに考える ZOZO前澤友作さんは花火師か、あるいは思想のある経営者か

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