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『こんな夜更けにバナナかよ』が教えてくれる「夢は小さくていい」ということ

渡辺真起子――クローズアップ

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介護の教科書では禁じ手?

 渡辺さん演じる貴子は、入浴介助で女性スタッフに囲まれる鹿野さんを「シカノ~。今日はハーレムみたいだね」と呼び捨てでちゃかす。介護の教科書では禁じ手とされるような行為だが、貴子役のイメージの源泉となったのは、鹿野さんが長年もっとも信頼を置いていた女性だった。

「鹿野さんは、全身さらし放題で、覚悟を持って生きていた。自分が同じ状況になったら、同じように生きられるだろうか、と思いましたね」

©2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会

 とかく日本人は「人に迷惑をかけないのが美徳」という思いにかられがちだ。

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「私は、健常者とか、障害者とかは関係なく、鹿野さんの“生きる意志”に圧倒されました。誰でも、自分の人生を生きるためには、自分の思いを表現することを恐れてはいけないと思うんです。時には軋轢(あつれき)やきしみが生じるかもしれない。でも、そうすることで本当の意味で生き生きと生きられるんじゃないかな。鹿野さんは最後まで夢を持って生き抜いたけれど、今、みんな夢が大きくなくちゃいけない、何者かにならなくちゃいけない、と思い込んでる。でも、本当は小さな夢でいいんだよね。この映画を通してそう思うようになりました」

©2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会

わたなべまきこ/1968年東京生まれ。88年に映画デビュー。『M/OTHER』『殯の森』『愛のむきだし』『ヒミズ』『チチを撮りに』『きみの鳥はうたえる』など国際的に評価される映画に多数出演。第55回アジア太平洋映画祭最優秀助演女優賞、第7回アジアン・フィルム・アワード最優秀助演女優賞などを受賞。

INFORMATION

『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』
公開中
http://bananakayo.jp/

 

『こんな夜更けにバナナかよ』が教えてくれる「夢は小さくていい」ということ

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