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70歳定年はポエムか? 成果も出せず会社にしがみつくサラリーマンの弊害

国が高齢者の社会保障を企業に押し付けている

2019/01/29

「お前はいいよな。サラリーマンはひどいもんだ」

 さらに先輩は続けて私にこう言った。

「おまえはいいよな。独立して社長になってるから。定年ないんだろ。サラリーマンはひどいもんだ。60歳すぎたら給料は半分だよ。能力が変わるわけじゃないのにいきなり半分ってひどくないか。おまえと違って交際費ももう使えないしね。まったく人をなんだとおもっているのだろうね」

 私からみれば、8年間ほぼ何の成果もあげていなかったら給料半分どころかクビになっていてもおかしくない水準だ。半分ももらえるのは大企業だからだ。先輩は若いころはもっと給料をもらうべきだったのかもしれない。でも今のこの状態では、会社が給料を出してくれることにむしろ感謝しなければならないのではないだろうか。

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 交際費についても多くのサラリーマンは誤解している。独立起業している私にとっては、交際費は自分が稼いだお金を交際するために削り取って使うお金だ。誰に対してどのように使うのか、サラリーマン時代よりもはるかにケチになった自分がいる。「自由に使えるから羨ましい」などというレベルではないのだ。

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「失業保険ってあるじゃない。たったの月11万円だよ」

 別の日に、つい先日60歳定年になった同期生と食事をする機会があった。彼も同じように今の私の境遇を羨ましがってからこう言った。

「退職したんだけど、ほら失業保険ってあるじゃない。あれ貰わないと損って聞いたのでハローワークつうの、あれ行ったんだ。もういやになったよ。めちゃくちゃ嫌味いわれるし、手続きのろいし。それで貰えるお金知ってる? たったの月11万円だよ。それもたったの3か月しかくれないんだ。冗談じゃないよ。アタマきたんで帰りに居酒屋でやけ酒しちゃったよ」

 ハローワークは想像するに手続き遅いだろうし、嫌味も言われて不快かもしれないが、思わず心の中で嘯いた。

「あのね。独立して自分で稼いだらわかるよ。月10万円稼ぐということがどんなに大変かということを」