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なぜ新日鉄資産差し押さえの判決はくだり、反日書籍は書店から消えたのか

日韓関係は「相互戦略的放置」の状態に

2019/01/25
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韓国で広がる「65年体制見直し論」

 中道派の韓国紙記者は、徴用工裁判の判決はそもそも「1965年の韓日基本条約を見直そうという動きが背景にある」と話す。

「韓国が民主化を成し遂げたのは1987年ですから、それ以前に結ばれた1965年の韓日基本条約には国民の声が反映されていなかったとする見方があり、民主化して30数年経った今、国民の意見を反映する形でこれを見直そうという動きが起きています。今回の元徴用工裁判での判決も、韓日基本条約では曖昧にされた日本の韓国併合(植民地支配)は不法だったという認識が根底にあるのです」 

ソウル市内の少女像 ©時事通信社

 1965年の日韓基本条約では、当時、日本による韓国併合が合法だったか不法だったかを巡り数年間、結論が出ず、最終的には、米国の仲裁で「もはや無効である」という曖昧な表現にされた経緯がある。

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韓国政府は3か月近く沈黙

「韓国政府はこれまで韓日基本条約を日韓関係の基礎としてきました。慰安婦や被爆者問題などは条約に含まれていなかったため課題として残りましたが、徴用工については含まれていて、韓国政府も補償はしています。ただ、個人請求権は消滅していないという立場で、1965年を見直すという動きも無視できない政府としては、今回の徴用工の裁判結果に慌てているとみられています。

 李洛淵総理を中心にして、関係省庁で対策会議が毎週開かれているようですが、沈黙を保っているのは、妙案がまったく出てこないのでしょう」(前出記者)

 韓国政府は昨年10月30日の判決から3カ月近く立場を表明していない。