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東京・下北沢にある“グラブ好きの聖地” 店長のあふれんばかりの思い

文春野球コラム ウィンターリーグ2019

2019/01/27
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「ポチる」というネットスラングが生まれたように、“ネット通販全盛期”と呼んでも過言ではない昨今。その流れはグラブ、バットなどの野球用品にも当てはまり、豊富な在庫数、大幅な値引き率で勝負するネットショップも珍しくなくなってきた。

 そんな中、「グラブは長く使うもの。実際に手に取り、“体感”して選んでほしい」と、東京・下北沢の野球用品専門店「ベースボールマリオ下北沢」の店長を務める澤木勇太郎(さわき・ゆうたろう)は語る。

「ベースボールマリオ下北沢」の澤木勇太郎店長

“異空間”を作り出すために

 京王線(小田急線)・下北沢駅から歩いて約1分の店舗。店内に足を進めると、バット、手袋、ウェアなどが陳列されたフロアとは一線を画す、ひとつのコーナーが待ち構えている。入口には、「インターネットの世界では体感出来ない匂い・雰囲気がここにはあります。」という説明文。全国最大級の約1400個のグラブがところ狭しと並ぶ、ベースボールマリオの代名詞「GLOVE-BULLPEN(グラブブルペン)」だ。フロア設置の意図とネーミングの由来を澤木が語る。

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「一般的な“グラブコーナー”ではなく、別空間のようにしたいと思って現在の形にしています。お客さまが足を踏み入れたときに、『“異世界”に入った』と感じるような雰囲気を作りたいと考えていました。ブルペン(bullpen)とは……bull(雄牛)、pen(囲い)の意味で闘牛場の戦いを待つ牛の囲い場のことです。このグラブブルペンはこれから戦いの場(グラウンド)に向かう牛達(グラブ達)がウズウズして待っている場所。これからグラウンドに出て大活躍するグラブになって欲しいという願いを込めています」

 扉1枚分のサイズの入口以外は壁で完全に覆われているため、バット、スパイクなどのコーナーからは内部が見えないようになっている。他のコーナーとの“分断”が、澤木のこだわりである「異空間への誘い」を表現している。

「GLOVE-BULLPEN(グラブブルペン)」の入口の様子

 元々同じ下北沢内の別テナントで営業していたが、手狭となったため、2017年11月に現在の店舗へと移転。旧店舗では、テナントの3階分を借り上げていた関係で、地下1階にグラブのみを並べるフロアを設け、“グラブブルペン”としていた。地下に繋がる階段を下りると、大量のグラブたちが待っている……。そのワクワク感、一面にズラリとグラブが並ぶ空間が話題を呼び、好評を博していた。面積は広がるが、1フロアとなる新店舗で、同様に“異空間”を作り出せないか、と澤木が悩み抜いて生み出したアイデアだ。

「以前は『階が違う』という明確な区切りがあったんですが、新店舗ではそれがない。でも、旧店舗時代のグラブブルペンが持っていた“世界観”を何とか踏襲したいと思っていました。そこで、有名テーマパークの戦略を参考にするなど、多方面から方法を模索しました」

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