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眞子さまご結婚延期から1年 小室圭さん文書は「平成流」と異なる方向性を物語っている

2019/02/11

「戦争の記憶」に触れられてきた

 天皇皇后はまた、戦争の記憶に積極的にかかわっていく。即位当初より、「皇室外交」を積極的に行い、その場における「おことば」では、昭和天皇以上にアジア・太平洋戦争に関する記憶に触れてきた。戦後50年の1995年には広島・長崎などを訪問、戦後60年の2005年にはアジア・太平洋戦争の激戦地であったサイパン島を訪問する。天皇皇后の外国訪問はその国からの招請という形で行われるのが通例だが、この訪問は天皇の意思によって行われており、その目的は「戦争により亡くなられた人々を慰霊し、平和を祈念するため」と公表された。これは極めて異例な訪問であった。戦後70年の2015年には、同じく激戦地のパラオを訪問している。

2015年8月15日、全国戦没者追悼式でおことばを述べられる天皇陛下 ©文藝春秋

 この年の全国戦没者追悼式での「おことば」では「ここに過去を顧み、さきの大戦に対する深い反省と共に、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い」と、「さきの大戦に対する深い反省」が述べられた。これも、そうした思考を曖昧化する安倍晋三総理大臣の姿勢と対比的に捉えられている。

世論調査で支持された「被災地見舞い」や「戦没者慰霊」

 そのためか、マスメディアは次第に、戦争の記憶への取り組みと国民との距離の近さを、平成の象徴天皇制を特徴づける二つの柱として論じていくようになる。世界各地では様々な紛争やテロが頻発し、日本においても戦争経験世代の急激な減少とともに戦争の記憶が風化する問題は指摘されてきた。そのような中で、戦争の記憶の問題に継続的に取り組む天皇皇后にマスメディアはより焦点を当てるようになったのだと思われる。近年、戦争の記憶への取り組みと国民との距離の近さの二つの柱を「平成流」と呼ぶことが多いように思われる。 

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2015年4月9日、パラオ・ペリリュー島のオレンジビーチを視察し一礼される天皇皇后両陛下 ©JMPA

 それは、国民からも支持を得ている。日本世論調査会が2018年12月に実施した全国世論調査によれば、現在の天皇のこれまでの活動で評価するものを二つまで答えてもらったところ「被災地見舞い」(70%)が最多で、「国際親善」(37%)、「戦没者慰霊」(29%)などが続いたという(「東京新聞」2019年1月3日)。天皇の様々な「公務」のうち、明仁天皇が熱心に取り組む活動に対して、国民も支持していると言える。「平成流」は評価されているのである。