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ファミリーマートの英断「こども食堂」をめぐって場外乱闘が勃発の巻

企業にとっては利益と社会貢献の両立を期待できる仕組みだが……

2019/02/07

意識も客単価も高い客が増えるかもしれない

 人間の無意識の消費行動というのはほとんど確率によって説明することができるし、他のコンビニエンスストアよりもファミリーマートを選びたくなるには「ちょっと小腹すいたからファミマでチキン買ってイートインで食べていくか」という行動一つひとつがその人のエンゲージメントを高め、再訪率が上がり、客単価が増えていくわけです。都市型(駅近)の消費行動も郊外の駐車場併設のロードサイド店も、店舗への滞在時間増がそのまま購買額増に繋がっているケースが多いうえに再訪率もどうやら上がるようだ、と分かれば、雑誌や書籍などの棚を削ってもイートインを作ってお客様に長く店舗に滞在してもらおうと考えるのも分からないでもありません。

 その延長線上に、地域で子ども食堂として貢献してくれているならばファミマ使おうか、という意識も客単価も高い客が増えるかもしれないし、長期的には「子どものころ空腹のところをファミマが食事提供してくれたからまたいこう」となる人も少なくないかもしれません。

 実際、マクドナルドもディズニーリゾートも年代を超えて支持を集めるブランドを維持できているところは、子どものころマクドナルドでお誕生日会を開いてマックナゲットを投げ合ったり、父親と母親に手を引かれてディズニーランドに遊びに行き夫婦喧嘩の果てに別れ話を持ち掛けられて号泣する母親を観たりするなど、いろんな体験を得ることがブランド形成には大事になってくるのです。

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 翻って、ふろむださんの記事の通り、これらの活動は企業にとって利益に繋がる、それでいて助かる地域の人も出るという好循環を期待できる仕組みですから、これは真の意味でファミリーマートの英断というのは凄いなと思うわけであります。クソみたいな言いがかりもたくさんつくかもしれませんが、全面的に進めて日本のコンビニサービスのスタンダードにしていってほしいと願うのみです。

将来のキャリア形成にも繋がらない仕事だと判断されている

 また、藤田孝典さんの話にも理があって、それは「これは『福祉』なのか」という点です。単純な話、今回のファミマ版「こども食堂」は福祉ではなく、貧困対策などは当然打ち出していません。しかしながら、そもそも「子ども食堂」の意味するところは当然地域の子どもが安く飯が食える場所であって、安く飯を食べなければならない家庭が裕福だとは必ずしも言えないでしょう。

 その背景には、コンビニ大手3社で働く外国人は5万人を超え、コンビニ業界で働く従業員全体の約7%を占める状態があり、企業努力の賜物とはいえどもなぜ外国人を雇用しなければならないのかと言えば、圧倒的な人手不足、コンビニの店員になりたいという日本人が少ないからです。ならば外国人で埋めていこうというのもまた企業努力の形の一つですが、逆説的に、日本人もコンビニの店員になりたいと思うような高給の職場ではなく、将来のキャリア形成にも繋がらない仕事だと判断されているからでしょう。

 コンビニの店員に高い給料を支払い、街角の尊敬される仕事の一つだという話になり、コンビニで働くパパママで夫婦子供10人の一家12人問題なく暮らせる社会環境であれば、そもそもコンビニに人手不足など起きません。フランチャイズ騒動もたびたび起きますが、ワープアの代名詞でもあるコンビニ店員になり手が少ないのは、給料が安くあまり尊敬されない仕事になってしまっているからに他ならないのです。