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連載僕が夫に出会うまで

セーラームーン好きの僕は「ぶりっ子だから」いじめられたのか

僕が夫に出会うまで #3

2019/02/14
note

書籍「僕が夫に出会うまで

 

2016年10月10日に、僕、七崎良輔は夫と結婚式を挙げた。

幼少期のイジメ、中学時代の初恋、高校時代の失恋と上京、カミングアウト……。僕が夫に出会うまでを振り返り、何を考え、何を感じて生きてきたのかを綴った「僕が夫に出会うまで」が現在発売中です。

 

文春オンラインでは中学時代まで(#1#9)と、母親へのカミングアウト(#28#30)を特別公開中。

 

自分がゲイであることを認めた瞬間から,彼の人生は大きく動いていきます。さまざまな出会いや別れ、喜び、悲しみ、怒り──幾多の困難を乗り越えて、生涯のパートナーに出会い、そして二人は大きな決断を下す。

 

物語の続きは、ぜひ書籍でお楽しみください。

 それからのぼくは、全くもって、「大丈夫」ではなかった。先生のおかげで、自分は「ふつう」ではない人間なのだと、気づかされてしまったからには、どうすればふつうの男の子っぽくできるかを、四六時中考えていなければならなかった。

 歩く時も、座る時も、喋る時も、常に周りの目を気にして「ふつうの男の子」を装った。ただ、好きなアニメや、興味のあるものだけは、変えることが、どうしても出来なかった。

 

 ぼくが大好きな『美少女戦士セーラームーン』というアニメは、3つ下の妹がいたのでなんとか一緒に観ることができた。だけど、女の子の観るアニメだから、ぼくは、セーラームーンが大好きなことを誰にも話さなかった。ぼくが1人でセーラームーンを観ていると、父や母が少し悲しそうな目をするのを知っていたからだ。

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 だけど、ぼくにはどうしても、なんとしてでも、欲しいものがあった。それは、セーラームーンが敵を攻撃するときに振りまわす、ステッキのおもちゃだ。

 そんなものを欲しいと言ったら何を言われるか、どう思われてしまうのか、と考えると恐ろしく、その想いは、小さな胸にしまい込んでいた。

 しかしぼくには、セーラームーンのおもちゃを手に入れるための、とっておきの秘策があったのだ!

年に1回のチャンスに全エネルギーをかけた

 もうすぐクリスマス。クリスマスにはサンタクロースという親切なおじいさんがやって来て、僕が1番欲しいものをプレゼントしてくれる。年に1回のチャンスに、ぼくは全エネルギーをかけていた。

 12月に入ると、ぼくの家にも、小さなクリスマスツリーが飾られた。ぼくは毎朝、目を覚ますと、クリスマスツリーの前に正座をして、手を合わせ、祈りを捧げた。

 

「セーラームーンのおもちゃが欲しいです、セーラームーンのおもちゃをください、サンタさん、お願いします!」

 もちろん言葉にはせず、心の中で、強く念じた。この念が、クリスマスツリーを通じて、サンタクロースへ届くと信じていた。