文春オンライン
「伊勢丹に行くたびに、負けられないなって思うんです」みたいな

「伊勢丹に行くたびに、負けられないなって思うんです」みたいな

デイリーポータルZ編集長 林雄司さん #3

2017/01/30
note

「西村雅彦の仲間入り」をしないと文芸じゃないんですよ

――デイリーポータルZを始めるにあたって、社内ではどう説明したんですか?

 説明しなかったんですよ、勝手に始めちゃったんで(笑)。勝手に始められるのがこの会社のおかしいところで。ニフティのやっていた、いろいろな情報を扱うウェブサービスの隅っこに、勝手にコーナーを作ったんです。小さなオリジナル記事だけで、だから「デイリーポータル」って全然意味のない言葉なんです。

 そんなわけで、当時は稟議書を書くと怒られるので、書かなくていい金額に小分けにしてもろもろ発注してました。20万円からは稟議が必要だったので、19万以下に分けて(笑)。上司はスルーしてくれましたが、経理にはバレてたと思います。あとはひたすらよけいな波風は立てないようにしていました。

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これ、通販で買ったんですよ

――それがいまやニフティの看板ともいえるサイトになったわけですが、いまのデイリーポータルZは一言でいうと「何」なんでしょう?

 困りますよね(笑)。楽しい読み物のサイトです。ブランディングなんてなにも考えていませんし、自分のやる仕事ができてよかったなあという感じで。

――ライバルは?

 『ナショナル ジオグラフィック』です。立派で大きいところを言っておくと、こっちも良さそうに見えるかなって。あと伊勢丹とか。イチローもかな(笑)。

――サイトで答えちゃだめなんですね。

 ずらしますね。「伊勢丹に行くたびに、負けられないなって思うんです」みたいに。

 

――その意味では「文春オンライン」はライバルにもなれないかも知れませんが、もし林さんが編集長だったら、どんな企画をやりたいですか?

「淑女の雑誌から」をやりたいです(笑)。あれ、おかしいじゃないですか。せっかくエロくしてるのに、コメントのダジャレで台無しにしてる(笑)。

――あれは新入社員の仕事で、オン・ザ・ジョブ・トレーニングの場なんだそうです。

 あのイラストレーターの方は、実在するんでしょうか(笑)。あの人に仕事を頼みたいなーってずっと思っているんですけど。ちょっとしたコラムも、イラストがあのタッチだと全部「淑女」になっちゃいますよね。

――種村国夫さんですね。印刷だとあまり見えないんですけど、原画を見ると小さい文字で「アッハ~ン」とか描いてあるんだそうです。

 スクープとかバンバンありつつ、雑誌の後半にいくと「淑女の雑誌から」とか東海林さだおさんの漫画があって、おっとりした部分もあるところが文春らしさかなって思いますね。なんていうか「文芸」ですよね。

 デイリーポータルZも文芸っぽくなると、ちょっといいなあって思いますね。ネットだからって、テクノロジーとかそういうのは僕はあまりおもしろくなくて。デイリーポータルZはあまりテクノロジーを使った記事はないし、テクノロジーが主役になっちゃうとあまりおもしろくない。たとえ3Dプリンターを使ったとしても、それを主役にするんじゃなくて、あくまでもくだらないことをする。「西村雅彦の仲間入り」をしないと文芸じゃないんですよ(笑)。

(編集部注:林さんが気になっている「淑女の雑誌から」の種村国夫さんインタビューはこちら!