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【閲覧注意】ギョギョ! ロシア発“深海魚”インスタ漁師を直撃取材

シン・ゴジラのモデルになった魚の名は。

2017/01/29
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 一度見たら忘れられない、夢に出てきてうなされそう、この世のものとは思えない──。インパクト絶大な深海魚の写真をインスタグラムやツイッターにアップするロシア人漁師が、今世界中で話題となっている。

赤い深海魚に8276いいね!

 品種としては深海に生息する珍しいサメ、エイ、アンコウなどで、得体の知れないグロテスクな形相のものがズラリ。映画『シン・ゴジラ』で第2形態のモデルにもなった深海ザメ「ラブカ」など貴重な魚も多く、なかには専門家でもはっきりわからない深海生物もちらほらあるとか。フォロワーから寄せられるコメントは「なんじゃこりゃあ!」といったほぼ悲鳴に近いもの。それでも日に日に人気が広がっているのは怖いもの見たさが勝ってのことだろう。

生きる化石とも呼ばれる深海ザメ「ラブカ」。映画『シン・ゴジラ』では第2形態のモデルにも。鋭く尖った針状の歯の数は300本! ©Roman Fedortsov

 ロシア北西部の町ムルマンスクを拠点にトロール船で漁をするロマン・フェドルツォフさんがインスタグラムを始めたのは、今から5年前の2012年のこと。飼い猫、愛車、自然の風景などにまぎれて、網にかかった魚の写真をちょろちょろとアップしてはいたものの、仲間内で少しばかり話題になる程度だった。

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プーチン批判の急先鋒が「クール!」とコメント

 事態が一変したのは昨年12月19日。ロシアのニュースサイト「RUPOSTER」にインスタグラムのおすすめユーザーとして紹介されるや、国内外に一気に拡散。一夜にして世界中にその存在が知られることになった。

ツイッターのフォロワーは11万人、インスタのフォロワー14万人。ムルマンスクの漁師は「now at sea」

 それまで380ほどだったフォロワー数は、今やツイッターが11万、インスタグラムは14万と爆発的な伸びを見せ、人気はうなぎのぼり。テレビや新聞などの取材が殺到したのはもちろんのこと、プーチン批判の急先鋒として知られる反政府活動家アレクセイ・ナワリヌィがツイッター上で「クール!」とコメントを寄せて接近してくるわ、最近では彼を騙る偽アカウントまで登場し対応に追われるといったネット世界ならではの洗礼も浴びている。

ウミグモの一種。オレンジ色が鮮やか。ロマンさんによると意外と動きが素早いそう。 ©Roman Fedortsov

「今は北極海。この時期は海が大荒れで大変なんだ」

 一躍時の人といったところだが、一介の漁師にすぎなかった彼こそそれまで深海でひっそり暮らしていたようなもの。ネットの荒海の中、急浮上のあまり減圧障害など起こしていないか、現在の様子や漁生活などについて聞いてみた。ズドラーストヴィチェ! ロマンさん、元気? 

──今はどこで何をしているの?
 1月からまた漁に出ているよ。今は北極海。この時期はいつも海が大荒れで大変なんだ。昨日はあまりにも船が揺れるからライフジャケットを着て寝たよ。

堅牢な鎧をまとったかのような顔を持つオニキンメ。長く鋭い歯のせいで口は閉じられないそう。 ©Roman Fedortsov

──漁師の仕事は楽しい? 
 トロール船の乗組員として働いてもう15年になるかな。港町で生まれ育ったから、大学を卒業して自然と今の仕事に就いたんだ。船では30人ほどが働いていて、だいたいがロシア人。おもに北極海や大西洋でタラ、オヒョウ、サーモンなんかを獲ってる。もしかしたら日本の食卓にも並んでるかもね。わかんないけど。

北極海で獲れたギンザメ。裏返すとブタ鼻、出っ歯の何とも言えない表情に。 ©Roman Fedortsov

──どうして魚の写真をアップし始めたの? 
 もともと写真が好きでインスタグラムを始めたんだけど、反響が大きいのはやっぱり深海魚の写真で、いつのまにか数が増えていったって感じかな。 トロール漁ってのは底引き網で海底にいるものは全部すくっちゃうわけ。残念だけど獲る魚を選べない。でも、だからこそいろいろな深海魚とも出会えるんだけどね。網にかかった深海魚はだいたい海に戻しているんだけど、そこで死んでしまうことも多いわけだから、せめて写真に残してあげたいというのもあるよ。

オオクチホシエソ。水の抵抗を受けないようにアゴには膜がなく、口を大きく開けて獲物を捕食するのだとか。 ©Roman Fedortsov

──深海魚は怖くない?
 みんなキモいとか言って怖がるけど、魚に対して一度も怖いっていう感情を抱いたことはないな。むしろかわいいくらいだし、神秘的な姿にいつも感動している。見たことのない魚の名前を仲間とわいわい調べたりしてね。楽しいもんだよ。

青みがかったツヤ感が神秘的すぎるチョウチンアンコウ。 ©Roman Fedortsov

──自由時間は何をしているの?
 船では6時間働いて、6時間休んでというのを繰り返しているんだ。休みのときは魚の写真をインスタグラムやツイッターに上げたり、世界中から送られてくるメッセージに返事を書いたり、あとはサッカーの試合を見たりかな。好きなクラブチームはアーセナルだよ。

オヒョウの一種。一つ目の巨人キュクロプスのようで見た目がエグい。 ©Roman Fedortsov

──陸に戻ったら何をしたい?
 もちろん家族に会いたいね。この前の正月休み前、8歳の息子が船の絵を描いてくれたんだけど、うれしかったな。一度漁に出ると5、6か月戻らないこともある。さびしくないといったらウソになるね。ストレスの多い仕事さ。

タナカゲンゲの近種。愛嬌ある目元と色鮮やかな配色が印象的。 ©Roman Fedortsov
カレイの一種。麻生太郎ばりに口がひん曲がっている(麻生氏と向きは逆)。 ©Roman Fedortsov

──有名人になったことについてどう思ってる?
 自分が何かすごいことをしているつもりはまったくないよ。神秘的な海の生き物の魅力をみんなと共有できればいいなって、ただそれだけ。たくさんの人に興味を持ってもらえることはうれしいんだけど、もっと怖い写真、もっと面白い写真を上げてよってつねに言われるんだよね(苦笑)。でも、これからもいろいろな魚をアップしていくから楽しみにしていてね。

「顔出しはNGだけど、夕日をバックにした写真ならOK」とロマンさん。

ロマン・フェドルツォフさんの写真は以下のリンクからどうぞ。偽アカウントにご注意ください!
ツイッター twitter.com/rfedortsov
インスタグラム instagram.com/rfedortsov_official_account/

【閲覧注意】ギョギョ! ロシア発“深海魚”インスタ漁師を直撃取材

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