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女優・山口紗弥加が明かす「『連ドラ60本も主演なし』の私を支えた社長のメール」

山口紗弥加さんインタビュー#1

「トラウマになりそう」と話題の心理サスペンスドラマ『絶対正義』(東海テレビ・フジテレビ系)をご存知だろうか。その怖すぎるドラマで一切の過ちを許さない主人公・高規範子を演じるのが山口紗弥加さんだ。

 山口さんは1994年に『若者のすべて』で女優デビュー。キャリアは25年目になるが、意外にも連ドラで主演をしたのは、昨年が初めてだった(『ブラックスキャンダル』)。そして『絶対正義』が2クール連続、2度目の主演作となる。そんな山口さんにこれまでのキャリアを振り返ってもらった。(全3回の1回目 #2#3も公開中)

女優・山口紗弥加さん

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“怖すぎて”片瀬那奈ちゃんに後ずさりされた

――『絶対正義』、強烈な役柄ですね。

山口 名前が高規範子で、「規範」という漢字が入っているんですよね。範子は自身を正義の権化、正義の女神テミスだと思っているのかも。正義に取り憑かれた女性なんです。

――まさにルールの人です。

山口 でも彼女の正義ってちょっと偏っていて、異常とも呼べると思うんですけど、法的に許されることのみが正義なんだと。法律で許されていないことは絶対に間違っている。そこには人としての優しさも、道徳的な配慮も一切ない。とても冷酷な人ですよね。

 

――ドラマの1話目、高校時代に範子の友達が妊娠します。そのとき範子の正義的に友達が「堕ろす」選択肢はアリだったんですよね。

山口 法的にOKなので範子としてはアリです。この問題に関しては私も異論ありません。その選択の裏には様々な事情が考えられますし、母体にもそれなりのリスクがあるはずです。ただ、高校生の時に友人たちに感謝され褒められた“正義感”を凝縮して、変に濃縮したような大人の範子が主張する正義には、一切共感できなくて……。もう主観で、私は範子なんだから、範子の正義が絶対だということを信じ抜いて、演じている。そんな感じです。

――範子の「私、何か間違ったこと言ってる?」、印象に残るセリフです。

山口 絶対的な自信がないと口にできない言葉ですよね。範子の正義が生んだ悲劇、その状況を全く理解していないし、しようともしない。「私が正してあげる」と悦に浸っているのが怖い。演じる上で、私自身は“怖さ”というものをまったく意識していなかったんですけど、現場で「ほんとに怖いからやめてほしい」「怖くて笑っちゃうから、もうちょっと普通にしてほしい」って言われたりして。でも私は普通に演じているだけなのでどう変えたらいいかわからない。

 片瀬那奈ちゃんは撮影の合間に談笑しているときでも、私が近づこうとすると、ほぼ同時に後ずさりするんですよ。えっ、なんでいま後ろに下がったのって訊いたら、「ごめん。なんか身体が勝手に反応しちゃった。怖いんだと思う」って。