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河崎 貴一
2015/12/24

近頃、赤ちゃんの泣き方 がおかしい! 親のスマホ熱中が原因?

source : 週刊文春 2015年12月24日号

genre : ライフ, 教育, ヘルス, ライフスタイル

「キ~~、キ~~ッ!」

 新幹線の車内で、突然、金属音が響いた。乗客が不審に思っていると、座席の上に2歳ぐらいの女の子が立ち上がって、泣き叫んでいた。しかし、隣に座っていた母親は、スマホに見入ったまま、女の子が泣くのを気にも止めなかった。

 別の時、地下鉄の電車に、若い夫婦が赤ちゃんを抱いて幼稚園児ぐらいの娘と乗り込んできた。しばらくすると、抱っこバンドで母親に抱かれた赤ちゃんが「ギャ~~」と叫び声にも似た泣き声を上げたが、両親は無言でスマホから手を離さなかった。母親と並んで座った女の子は、赤ちゃんをあやしていたが泣きやまない。

 女の子の方が、「お母さん、スマホをやめたら」と諭すが、それでも両親2人は無言のまま、スマホをやめなかった。

 こんな異常な泣き方をする乳幼児が増えている。そのことに気づいたのは、長野県塩尻市の中村病院に勤務する菅谷(すげのや)紘子医師(小児科)だった。

「金属的な叫び声のような泣き方をする子、泣き始めるとパニックになっておさまらない子が、数10人に1人の割合でいます。私は小児科医になって47年になりますが、乳幼児が変な泣き方をするようになったのは初めてでした。女の子の方が多いのですが、男の子もいます」

待合室で「スマホ」を使う親が

 菅谷医師が、乳幼児の泣き方が変になったと気づいたのはここ4~5年のこと。

「キ~」とか「ギャ~」という変な泣き方が聞こえてきたので、待合室を覗くと異様な光景を目撃した。

「待合室でスマートフォンを使うお母さん、お父さんが増えました。お母さんが赤ちゃんを抱っこバンドで前抱っこしている時、赤ちゃんは一心にお母さんの顔を見つめているのに、お母さんは顔をそむけたまま無表情でスマホを使っている。赤ん坊が少し大きくなって、スマホに手を伸ばすようになると、お父さんは『こうするんだよ』と教えるかのように、子どもの手をとって画面で操作させている。だから、診察が終わるやいなや、お母さんのバッグからスマホを勝手に取り出して使い始める子もいます」

©iStock

 乳幼児の異常行動には、神川小児科クリニック(東京都大田区)の神川晃院長も気づいていた。神川医師は、日本小児科医会の副会長である。

「最近、パニックを起こして自己抑制できない子どもたちが多いですね。とくに予防接種では過剰に反応し、泣きわめく、騒ぐ、蹴る。小児科医の多くは今の子どもたちは少しおかしい、と思っていますよ」

 神川医師も、自己抑制が利かない子どもとITメディアとの関係を指摘する。

「今の乳幼児の親の世代は、相手の顔を見て、反応をうかがって言葉を選びながら話すのが、苦手な方がいます。それは、子どもの頃からテレビやテレビゲームに接して、人と人の言葉によるコミュニケーションを取る機会が少なかったのが原因のように思います。

 子どもたちは親とアイコンタクトを通して信頼関係を築いて育つのに、親たちは子どもに対してきちんと応答しない時があります。それでは、子どもたちは精神的に不安定になってしまいます。スマホを使っている親は、子どもと向きあわずに簡単にスマホを子どもに渡しているのです」