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木村 正人
2017/01/29

メイ首相がハードブレグジット表明 分断される英国

「私たちが目指すのはEUの部分会員や準会員ではない」

 昨年6月の国民投票で欧州連合(EU)離脱を選択した英国のメイ首相が17日、初めて離脱の青写真を示した。それは人・モノ・資本・サービスの自由移動を認めた単一市場と、関税がかからない関税同盟からも離脱する「超ハードブレグジット」だ。

 就任から6カ月余、「ブレグジットはブレグジットよ」としか言わないメイに業を煮やした英誌エコノミストは「Theresa Maybe(もしかしたらのテリーザ)決められない英国の首相」と皮肉った。メイはこれを打ち消すように42分の演説で実に14回も「clear(はっきりとした)」という単語を繰り返した。

 域内なら自由に活動できる金融パスポートを早々と諦めたメイの決断をEUは歓迎した。国際金融大手HSBCは1000人をロンドンからパリに動かすと発表。UBSもフランクフルトやスペインへの人員シフトをほのめかす。

 これで英金融街シティーから最大7万5000人の雇用が失われる。企業を引き留めるため英国が法人税を引き下げれば財政が逼迫する一方、難事業の離脱交渉に備え公務員の大幅増員が求められている。

27日にはトランプ米大統領と会談する ©共同通信社

 トランプ大統領の米国と同様、国民投票により真っ二つに分かれた英国にも、決して交わることのない「パラレルワールド(並行世界)」が出現している。グローバル企業、大学、若者、官僚は憔悴する一方で、高齢者、失業者、半熟練・単純労働者はEU移民制限を前面に打ち出したメイに喝采を送る。

 だが、40年以上に及ぶEUとの関係を断ち切り、さらにグローバルな英国を目指すという青写真が実現される保証は何一つない。グローバル経済が生み出した勝ち組と負け組は二度と折り合わないだろう。負け組は「主権をEUから取り戻そう」と主張するが、本音は急増した移民を英国から蹴り出してしまいたいのだ。

“氷の女王”メイを突き上げる保守党強硬派の鼻息は荒い。国民投票の結果を総選挙に落とし込むと議員定数650のうち421議席が離脱派になる。人の自由移動(移民)に理解を示す最大野党・労働党は低迷し、保守党の一党支配が続きそうだ。

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