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連載近田春夫の考えるヒット

近田 春夫
2017/02/05

ミスチル桜井と小室哲哉を結ぶjpopならではの表現手法とは…

『ヒカリノアトリエ』(Mr.Children)/『モノクロ』(Flower)

絵=安斎肇

 くどいようだがロックとは歌謡曲とはjpopとは……。一体全体それぞれどこが違うというのか。この国でこのような連載を抱えていれば、俺じゃなくたって悩まざるをえないとても大きな問題だろう。なんたって『考えるヒット』なんですもんねコレ……。

 それにしてもこの件というか定義に関しては、誰も評論家の人ちゃんと言及とかしてくれてないよ未だに。違うかね? いやいやそこだけは確かだ。自信を持っていえる。おっとっと……またまた悪意ある発言をしてしまった。失礼。性格の悪さはこの歳になっても、なかなかなおんねーかもしんねーなと……。

 そういった文脈(ってどんな文脈よ!)においてミスチルの新曲を聴く。

ヒカリノアトリエ/Mr.Children(トイズファクトリー) 前作から2年ぶり、36枚目のシングル。NHK朝ドラ『べっぴんさん』主題歌。

『ヒカリノアトリエ』は、NHKの“朝の連続テレビ小説”でお馴染みなのだそうだが、そんなものまず俺が観ているわけもないわけで、当然、曲も一度も聴いたことない状態なんでありますが、ただ、例によって逆を申せば、ドラマのイメージなどに引きずられることもなく楽曲の印象を綴ることは出来る。このページにとってみてはありがたいことなのかも(?)なのです。

 ところでミスター・チルドレンのこの新曲は果たしてロックなのか。

 率直にいって“狭義でいうところのロック”ではないでせう。少なくとも聴いたかぎり私はそうした意見だ。

 さて音源の再生を始めると、ゆったりめのテンポのピアノのアルペジオ風イントロに続きごく自然な成り行きで歌が入ってくる。するとそこはもうしっかりとミスチルの世界だ。それは無論歌詞(物語)のもたらす情感によるところも大きいのだろうが、一方メロディ作りにも大きな特徴があるのが桜井和寿だ。

 すなわちこの人には――十八番といってもいい――独特な十六分音符起用法というのがあると私は思っているのだが、今作品においても――いくらリスナーがボーっとしていようと目についてしまうレベルで――それはしっかりと散見出来るのである。

 てか正確に申せば「無声音を多用して一音節内に詰め込む情報の量を増やす」というワザでありますが、これは伝統的歌謡曲には決してみられない。jpopならではの表現手法である。おっ。図らずも私の頭を悩ませていた問題のひとつの答えの糸口のようなものが見えてきました。ありがとうミスター・チルドレン。

モノクロ/Flower(Sony Music) E-girlsを組むユニットのひとつ。これまでの曲と違い、ダンサブルな一曲。コーセーCMソング。

 ついでに申せば、述べた手法を一般化したのは間違いなく小室哲哉だ。もひとつついでに申せば、それより以前に俺は意識的にそのようなことを『地球の片隅で』という作品の中に残してますんでヒマな人はチェックしてみてね。

 そうだ! なんでこのミスチル曲がロックじゃないのか。主人公の態度がどうにも繊細すぎる。そこですね(笑)。

 Flower。

 十六分音符ということで申せば、この歌唱の十六分部分のモッサリ感はミックスでもう少し何とか直せたよね多分。

今週の世界平和「テレビをつければトランプトランプとやっているけど、トランプさんの現在時点で最大の功績は、彼の発言がすべて無意味ってことだよね。世界中で口げんかは増えても、ひとつひとつの言葉の重さが失われてるから、ガス抜きになってそれ以上に進まなくなるんじゃないかな」と近田春夫氏。「そこら辺楽しみにして、テレビを見ております」

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