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森岡 英樹
2017/02/03

残業ゼロとCM展開 日本電産・永守社長“転向”の理由

京都出身で今も本社を置く ©共同通信社

「過去に言ってきたことと全く違うことを言っている」

 1月24日、決算説明会で自社の働き方改革についてこう語ったのが、日本電産の永守重信社長兼会長(72)だ。

 最新のロボットやスーパーコンピューターを導入して製品の開発期間を短縮したり、業務の効率化のためのソフトウェアを導入して労働時間を短縮。一方で、残業代の減少分は賞与や手当の増額で補い、年収減にはしないという。

「2020年までに1000億円を投資します。永守氏といえば、超のつくハードワーカーで知られるだけに周囲は驚きました」(金融関係者)

 休むのは元旦の午前中だけで、信条は「他人の倍働く」。これは母親の口癖で、創業の際「他人の倍働くか、そうしたら成功する」と言われたためという。また、経営哲学の一つは「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」。

 そんな永守氏がなぜ“転向”したのか。その狙いは、人材獲得にあるという。

「永守氏は、2030年に売上高10兆円を掲げていますが、現在の売上高は1兆円台。10兆円については本人も『ホラですよ』と言っていますが、何度も公言してきた2020年の売上高2兆円台は、いわば“必達目標”です。そのためには人材確保が不可欠で、『昨年と今年で管理者クラスの技術者を1000人採用する』と、決算会見で明かしました」(同前)

 永守氏の“転向”は、働き方だけではない。テレビCMや新聞・雑誌への広告展開がそれだ。「広告を出すぐらいなら生産設備の一つでも買った方がいい」と公言し、事実上無借金の堅実な経営で知られたが、昨年から大々的な宣伝攻勢を始めた。2020年までの広告宣伝費は約300億円に上るといい、これも採用のために知名度を上げる狙いからだ。

 経費に厳しいことで知られた永守イズムの転換だが、合併で拡大を続けてきた日本電産が大きな岐路に立っていることは確かだ。

「もともと同社は、同業他社に比べて給料が高くなく、従業員の数も減っていた。カリスマ経営者としてもてはやされる永守氏ですが、ぶち上げた目標に届かないことも少なくない」(メガバンク幹部)

 永守氏は、本当に変われるのか。