昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載THIS WEEK

黒田 勝弘
2017/02/05

弾劾可決後初の朴大統領の肉声 意外な仕掛け人

約60分語った朴大統領 ©共同通信社

「今回のことは偶然ではなく、以前から計画されたもののように感じる」

 1月25日、朴槿恵大統領は、弾劾訴追案可決後、初めてインタビューに応じた。インタビューしたのは、韓国経済新聞の主筆で保守論客として知られる鄭奎載(チョンギュジェ)氏。その内容は〈朴大統領の肉声反撃〉と題されて、氏が個人運営するインターネット放送「鄭奎載TV」で公開された。

 このインタビューにおいて朴大統領は、崔順実との付き合いは認めたものの、国政介入や機密流出など弾劾理由になっている疑惑はすべて否定。とくにセウォル号沈没事故当時の元秘書(崔順実の前夫)との密会説や、大統領官邸での麻薬使用説など、マスコミが垂れ流したスキャンダル疑惑については「国の品格が疑われるとんでもないウソ」と鬱憤を吐露した。

 また、たとえウソであっても、「いったんある方向に風が吹くと『そうじゃない』といっても誰も聞いてくれないのが韓国だ」といい、その上で冒頭のごとく、左派勢力による陰謀論を匂わせた。

 実は彼女にとってメディアの単独インタビュー自体、就任以来、初めてのこと。その舞台になぜ無名のインターネットメディアが選ばれたのか。

 鄭氏は朴大統領の国民経済諮問会議のメンバーであり、官邸でもよく顔を会わせていた。今回の騒動でも、大勢に抗して朴支持を鮮明にし、KBSのテレビ討論会などの場で、国をあげて“朴叩き”に走るロウソクデモを堂々と批判した。

 政界筋では、日ごろ官邸でテレビをよく見ている彼女が、鄭氏に白羽の矢を立てたという見方が専らだ。背景に大手メディアへの不信があることは言うまでもあるまい。また職務停止中であることを考慮し、“違法活動”にならない範囲内での選択だったようだ。

 朴大統領が語った内容に対しては、野党側から「自分に罪の意識がなく、陰謀論を語るとは」などと批判が噴出。民意も、彼女が意図した「反転攻勢」にはほど遠い。

 保守派は就任当初から“不通”ではなくインタビューに応じて、「もっと国民に真情を吐露していれば、これほどは叩かれなかったのに」と嘆くが、いささか“手遅れ感”は免れない。

はてなブックマークに追加