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宮坂 学
2017/02/07

ヤフー宮坂社長「健康と友人を失って目が覚めた」

ヤフー宮坂学社長が語る「週休3日制」の真意 #2

source : 文藝春秋 2017年1月号

genre : ビジネス, 働き方, 企業

働き方改革で、会社の競争力を高める――(第1回参照)。ヤフー社長として、「週休3日制」をはじめとする改革を断行する宮坂学氏。改革の原点には、過去の自分の働き方の反省があった。(出典:文藝春秋2017年1月号・全5回)

20代の頃のモーレツな働きぶり

 今でこそ働き方改革の旗振りをしていますが、20代の頃は、それこそモーレツな働き方をしていました。大学を卒業し、91年に就職したのはベンチャー企業でした。出版社の下請けだったので、締切前はほとんど徹夜の毎日です。就職のために上京したもののお金がなくて部屋を借りられず、先輩の家に間借りしていたこともあり、頻繁に会社に泊まっていました。

 97年に創業2年目のヤフーに転職してからも、働き方は変わりませんでした。時間を割いて頑張るほど成果が上がるのがおもしろく、私生活はほぼ皆無。社員は数十人ほどしかおらず、ソフトバンク本社の片隅に作ったオフィスに連日のように泊まり込み、当時の井上(雅博)社長に「家賃を取るぞ!」と呆れられたこともあります。

 その年の秋にはジャスダックに上場し、ヤフーは右肩上がりで業績を伸ばしていきます。会社の成長を肌で感じ、忙しいながらも充実している毎日だと感じていました。

友人が1人もいなくなった

 ところが、30代前半で考えが変わりました。ろくに睡眠もとらず、座りっぱなしで長時間パソコンに向かう生活を続けていたためか、ひどい腰痛で仕事に影響が出てしまった。そこでランニングを始めたところ痛みは和らぎ、身体を動かすようになったのでコンビニに頼っていた食生活の改善にも関心が湧きました。睡眠の質にも気を配り、会社で同僚と過ごすのではなく、1人でゆっくり考える時間の有効性もわかった。あのまま働き続けていたら、間違いなく体を壊していたでしょう。

 失ったのは、健康だけではありません。20~30代にかけて仕事漬けの毎日を送ったおかげで、昔からの友人は1人残らずいなくなりました。大学時代に読書や勉強で詰め込んだ知識も、吐き出すばかりで吸収する時間はゼロ。減価償却を終え、空っぽの状態になっていました。

 日頃からインプットを心がけていないと、いい仕事はできません。いまは毎朝10キロほどランニングし、休日には、本を読んだりしています。仕事と関係ない人に会うのも重要で、先日は障害者雇用の専門家の方に「障害者の方たちは、ヤフーが使いづらいと言っている」と指摘され、ハッとすることがありました。色覚障害の方たちに見にくい色づかいのページや、字が小さい箇所があり、対応できているサービスもあるものの、目標としてきた“誰でも使えるサービス”になっていないことに改めて気づきました。

 体調を崩すまでは「ロングワークではないハードワークなんて存在しない」と考えていたのですが(笑)、ロングワークではないハードワークこそが、正しい働き方だと身をもって学んだことが今回の改革につながっています。

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