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連載近田春夫の考えるヒット

近田 春夫
2017/02/08

歌だけでなく踊りもすごい切れ もとFolder三浦大知の成長ぶり

『EXCITE』(三浦大知)/『HORIZON』(湘南乃風)

絵=安斎肇

 イマジン! マイケル・ジャクソンがただ単なる歌うたいだったら。一切ダンスなんぞはせず――東海林(しょうじ)太郎よろしく――直立不動で歌うだけの人だったとしたら……。

 その歌唱が如何に素晴らしいものであったとしても、例えばムーンウォーク無しであそこまでの成功を手にすることは果たして可能だったのか。

 そう考えるとこの時代。とりあえず“損得”という事情にのみ絞って議論してみても、歌手にとって“振り付け”がますますもって決しておろそかになど出来ぬ代物となってきているのは、多分間違いのないことであろう。かように俺は思うわけだが、ときに三浦大知がここまですごい人気になっているとは! 不勉強で申し訳ない。まったく知らなんだ。さらに申せばもうこんなに大人になってたんだよなぁ。このページでFolderを取り上げていたころがなんだか懐かしいよォ。

EXCITE/三浦大知(AVEX)05年にソロデビュー後、武道館公演など着実にキャリアを伸ばす。『仮面ライダー エグゼイド』主題歌。

 さて。なんで冒頭のような話になったのかである。ベタではありますが、三浦大知と聞いてやはりマイケル・ジャクソンを想い出さずにはいられなかったからだ。この男の今日の地位というものはやはり歌だけではない、肉体の動きもあってはじめて勝ち得たものに違いないと。web上に上がっているパフォーマンスの動画などを観ては、つくづくそう実感してしまう。

 それはそうと歌と踊り(振り付け)は、表現といいつつ評価の基準はまた別物である。何故といって、jpop、ことにアイドルにおいて顕著だが、お歌は相当ヘタでもいわゆる味があれば全然オッケーだろう。しかし振り付けとなるとなかなかそうはいかぬ。

 ひとつの例に――お取り込み中まことに恐縮だが――中居正広が、何かの折に野球場で歌ってみせた『君が代』ぐらいのレベルのスキルでダンスしているところを想像してみてほしい。そりゃ誰が考えたって……だわよねェ(笑)。

 やっと本題に入れそうです。今回の三浦大知シングルは、仮面ライダー エグゼイドというヒーロー物、要するに子供用(ですよね?)の番組の主題歌らしいのだが、耳にした限りでは、DJも回したくなるような溜めの効いたサウンドプロダクションで、ダークな色合いはむしろ大人向けといっていい。そこに乗っかる歌唱もさすがダンスのマエストロらしく、ビートやタイミングのなんたるかをしっかりとわきまえた、いわゆる“グルーヴ感”に溢れたものとなっている。

HORIZON/湘南乃風(トイズファクトリー)4人組レゲエグループのシングル「龍虎宴」収録。ゲーム原作の実写ドラマ『龍が如く』主題歌。

 それだけに残念でならないのが歌詞なのだ。ただ断っておくが、そう思うのはあくまで私の主観である。この(俺にとっては)観念的で通り一遍で、新鮮味のない語彙(ごい)こそ、そこがいいんじゃないの、わかってねーなぁとおっしゃる向きもきっと大勢いらっしゃる。そうじゃなきゃこの曲だってこんな大ヒットなんかには決してなりませんものね。

 湘南乃風。

 相変わらず安定感のあるサウンドデザインだ。本当に達者な人達である。

今週のWOW WAR TONIGHT「来る2月9日にトークショーをやるよ。題して“これから宇宙はどうなってゆくのかしら”。場所は代官山“晴れたら空に豆まいて”にて。上祐史浩氏、内田裕也氏と話題になったイベントだけど今回もすごい人です。小室哲哉氏」と近田春夫氏。「これからのjpopのムーヴメントについて忌憚なく語りあうつもりだよ」