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連載歴史・時代小説の歩き方

大矢 博子
2015/10/03

耽美がくるりと輪を描いた(前編)
――『陰陽師』の様式美

genre : エンタメ, 読書

 堂本光一の博雅、悪くないじゃん! でも、アレが足りない。

 あ、先月、テレビ朝日系で放送されたスペシャルドラマ「陰陽師」の話です。夢枕獏『陰陽師』の映像化といえば、安倍晴明を野村萬斎が、相棒である源博雅を伊藤英明が演じたあの印象が強くて、博雅を堂本光一ってちょっとキレイすぎない? か弱過ぎない? 博雅ってどっちかというとバ……げふんげふん、骨太で無骨(文字で書くと逆の意味みたいだ)なイメージだから光一はなあ……と思っていたわけさ。

 そしたらば。悪くないよキレイな博雅! 可愛くて純で、これはアリ。ただキレイなだけじゃなくて殺陣も見事で、この子武家の子戦う子、って感じがよく出てたし。見た目がキレイなので、市川染五郎演じる晴明との場面はもう、耽美耽美。可愛い子には耽美をさせよ。

 ただ、不満もある。アレがなかったのだ。映画版ではちゃんとあった、アレが。はい、ここで原作ファンに問題です。

【問】夢枕獏『陰陽師』を3行で表しなさい。(10点)

【答】「ゆこう」
   「ゆこう」
   そういうことになった。

 これですよ『陰陽師』は。原作は殆どが短編で、大抵は博雅が晴明宅を訪れ、ふたりで酒を飲んでいる場面から始まる。庭を眺めてまったりと、からかったりからかわれたり、好きな人ができたとかこんな事件があったとかって話をして、「ではゆくか」「ゆこう」「ゆこう」そういうことになった――で、現場へ赴く、という流れなのだ。

【次ページ】「陰陽師」は単発ドラマには向かない?

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