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人類1万年の友の秘密を私たちはまだ知らない……。ねこが愛される理由を読み解く

『ねこの秘密』 (山根明弘 著)

note

――ねこの恋の季節はいつですか?

「ねこの恋」と聞いて思い浮かべるだろう「アーオー、アーオー」という鳴き声は、発情したオスねこがメスを求めて叫んでいる声です。

 そう思って聞くと、せつなく聞こえてきませんか。ねこのオスは人間のオスのように一年中、メスにアプローチするわけではありません。オスが叫ぶのは、メスが発情しているときだけです。飼い猫ならメスは生後6~10カ月頃に最初の発情が始まり、オスは生後10カ月ぐらいには繁殖能力を持ちます。

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「ねこの恋」は春の季語ですが、メスの発情は実際にはもう少し早く、1月の初め頃から始まり、2月にピークを迎え、3月の末頃にはほぼ終了します。それぞれのメスの発情期間は数日間で、長くて2週間ほどです。そして、5月頃、繁殖に失敗したメスの一部が再び発情します。

 この発情期間中に子どもを宿したメスねこは、2カ月ほどの妊娠期間を経て、出産します。1回の出産で3~6匹が産まれます。

 ねこの発情期は普通、1年に一度しかなく、そのため出産も年に一度しかしません。しかし、近年、都市部のノラネコの発情・妊娠回数が増えてきました。栄養の摂り過ぎが原因だと考えられます。ノラネコは野生動物のようなものですから、可能な限り子孫を残そうとします。不妊手術を受けていないメスが、街でありつける高カロリーの餌を多量に食べ続ければ、余ったカロリーは、すべて繁殖にまわされてしまうのです。極端な場合では、年に3、4回も出産することがあります。するとノラネコが増えすぎ、飢える仔ねこが出て来たり、近隣住民の苦情から殺処分の対象とされてしまうこともあります。優しい気持ちが思わぬ悲劇を生み出すことを心に留めていただければと思います。

――どんなメスがもてるのですか?

 

 同じ時期に発情しているのに、たくさんのオスに囲まれて求愛を受けるメスもいれば、あまり求愛されないメスもいます。その違いは、メスの若さや出産の経験のようです。仔ねこを産み無事に育て上げたことのない、あるいはそういう経験の少ない若いメスは、オスにとってあまり魅力がないようです。それとは逆に、これまで何度も出産し、仔ねこを何匹も無事に育て上げたことのあるメスは、たくさんのオスから求愛を受けることになります。人間の場合とは逆とは言いませんが、オスによるメスの魅力の判断基準は人間とねことでは少し違うようにも思えます。

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