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連載歴史・時代小説の歩き方

大矢 博子
2014/10/04

誰が読んだか銭形平次
――国民的ヒーローの原作小説に驚く

genre : エンタメ, 読書

 歴史・時代小説の面白さを伝えるエッセイを――と言われ、考えてみた。この分野にハマるきっかけとなった小説は多々あるが、自分の記憶にある最初の時代物は銭形平次だと思う。野村胡堂が1931年から26年間にわたって書き続けた、戦前戦後の国民的人気小説『銭形平次捕物控』……ではなく、大川橋蔵のドラマの方ね。八五郎役の林家珍平が「てえへんだてえへんだ」と駆け込んでくるアレだ。

 当時はまだ小学生で、橋蔵ラブの祖母の隣でハナをほじりながらぼんやり見ていた私は、捕物帳の何たるかなどまったく理解していなかった。ただ、舟木一夫の歌うテーマソング(※)で、花のお江戸には八百八町あることや、武器として銭を飛ばすことをなんとなく知ったものだ。のちに舟木一夫は「燃えよドラゴンズ!'99」を歌い、おかげで私は今でもその年の中日ドラゴンズのスタメンをそらで言える。人生で大事なことはみんな舟木一夫が教えてくれた。

※「銭形平次」作詞:関沢新一

 しかしそんな銭形平次も放送が終わって幾星霜。今の子は平次を知ってるんだろうか? 高校生の姪にLINEで訊いてみた。

「時代劇の銭形平次って知ってる?」
「聞いたことあるけど忘れた」
「どうして銭形って呼ばれてると思う?」
「頭が銭の形とか」

 どんな頭だよそれは。むしろ見てみたいわ。

 しかしかく言う私も小説は系統立てて読んだことがないのである。紙と電子を合わせればかなりの作品が読めるので、これを機にちゃんと読んでみよう――って、え、何これ? いきなり第1作「金色の処女」で私の脳内ガラッ八がてえへんだてえへんだと駆け回りだしたんですけど。落ち着け、八。いや私。

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