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連載歴史・時代小説の歩き方

大矢 博子
2015/05/02

テツは熱いうちに打て(前編)
――日本鉄道事始め

genre : エンタメ, 読書

  前々回、「着いてるね、乗ってるね――飛脚と夜汽車と新幹線」と題して、先日開業した北陸新幹線のルートは加賀藩の大名行列のルートでもあり、飛脚が走った道でもあるんだってな話を書いたらばさ、一部にとてもご好評いただいたようで、「またあの手の話を」とのリクエストを多く頂戴した――んだけども。

 いや、ありがたいんですけどね、ちょっと待てと。「急行『北陸』の話が良かった」「北陸はD51が牽いてましたね」って、食いつくところが違うぞと。そりゃ確かに松本清張『ゼロの焦点』も取り上げたけどもさ、メインは飛脚だからね? このコラムは《歴史・時代小説の歩き方》だからね? 「急行『北陸』は刀根駅のところにスイッチバックがあって」とかどうでもいいから! それ時代小説カンケーないから!

ゼロの焦点 (新潮文庫)

松本 清張(著)

新潮社
1971年2月23日 発売

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 つまり「またあの手の話を」というのは飛脚ではなく、テツ話だったのだ。世に凄まじきは鉄道マニア――いわゆる「テツ」の熱意である。ひとりひとりと会って「目を覚ませ!」と後ろから頭をはたきたい。まあ、おもにうちのダンナですけどね。テツは熱いうちに打て。そういう意味じゃありませんかそうですか。

 しかしまあ、それだけ反応いただいたとあれば、受けて立とう。正真正銘の時代小説に出てくる鉄ネタを出しましょうともさ。となれば江戸時代はムリなので、明治モノですな。明治時代、日本に鉄道が開通したのは明治5年、ご存知新橋―横浜間だ。この頃の新橋駅が登場するのが、杉本章子の直木賞受賞作『東京新大橋雨中図』(文春文庫)なんだが、それをそのまま出すんじゃ芸がない。

東京新大橋雨中図 (文春文庫)

杉本 章子 (著)

文藝春秋
1991年11月発売

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 鉄道開業、明治5年、新橋―横浜。はい、日本史で習いましたね? そこまでなら皆さん、ご存知ですね? では、ここで問題です。新橋―横浜の次に開業した区間は、いつ、どこでしょう?

【次ページ】二番目に開通した区間に、元岡っ引きが乗る話

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