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岩瀬 大輔
2017/02/12

53歳で「若手社長」の金融業界。もっと若いリーダーを

旬選ジャーナル 目利きが選ぶ一推しニュース

▼〈生保マネー 脱国債進む〉『日本経済新聞』1月23日

 世界の資本市場は不確実性を増している。国内でも超低金利政策が継続していることもあり、生命保険業界も、引き続き逆風に晒されるだろう。

 そんな折、日本経済新聞で「生保マネー 脱国債進む」(1月23日朝刊)と題する記事を読んだ。〈かつて国債市場の主役だった生保マネーは姿を消すのか〉という問題提起から、日本生命の筒井義信社長、第一生命の渡辺光一郎社長にインタビューをして分析している。〈日銀の資金循環統計をみると、生命保険会社の国債離れは鮮明〉と記事は指摘する。実際、日生の筒井社長は、「脱国債」志向を鮮明にしているという。

岩瀬 大輔氏

 そんな中、私が着目したのは、〈17年は海外市場での運用ノウハウをいかに身につけるかが生保間の優劣を分ける重要なカギになりそうだ〉という部分だ。この点では、第一生命の動きが大変参考になる。米運用会社ジャナス・キャピタル・グループに20%を出資、今年6月までに、同グループは欧州株に強い英ヘンダーソン・グローバル・インベスターズと合併する予定だからだ。

 こうした積極的な海外進出に一貫して携わってきたのが、今年4月に社長に昇格する、53歳の稲垣精二取締役常務執行役員である。昨年12月、稲垣次期社長が発表された時、大手紙は一斉に「大手金融で最年少」という見出しで報じた。53歳の社長誕生はこれまでの大手銀行・生保の人事の常識を覆す。私は、国際派の「若手」を抜擢した第一生命のこの人事に、業界のトップ企業が自らを変革せんとする強い意志を感じる。

 もっとも、世界に目を向けると50代前半での金融トップ就任は決して若くない。米国銀行界を代表するバンカーであるジェイミー・ダイモン氏がJPモルガン銀行CEOに就任したのは49歳。仏生命保険大手アクサのCEO、トーマス・ブベル氏は弱冠43歳のドイツ人。テクノロジーによるディスラプション(断絶的な変革)が予想される保険業界においても、若い経営者をトップに据えることが求められる時代が来たのだ。

 若手といえば、欧州政治でも若いリーダーの台頭が注目されている。14年に39歳でイタリア首相に就任したマッテオ・レンツィ、今年の仏大統領選の第三の候補として期待が集まる39歳のエマニュエル・マクロン前経済大臣。この流れに先鞭をつけたのは39歳で英国保守党党首、43歳で首相に就任したデイヴィッド・キャメロンだろうか。

 このような例と比べると、日本(特に企業トップ)では、リーダーの若返りはまだまだ黎明期と言わざるを得ない。

 一方で、日本でも、地方政治の世界では多くの若い首長が選ばれ、支持されていることには注目したい。現在、2期目を務める鈴木英敬三重県知事の初当選は36歳。熊谷俊人千葉市長は31歳、高島宗一郎福岡市長も36歳で選ばれている。彼らは皆、地元で高い支持を受けている。地方政治の舞台で人々が若いリーダーの誕生を切望しているのは、ひとえに現状を打破して変革を起こして欲しいという気持ちからであろう。

 若いリーダーが成功するとは限らない。むしろ大切なのは彼らが、経験と知恵を持ったベテランとどのように力を組み合わせるか、そしてベテラン勢においては、いかに若手リーダーが自在に力を発揮できるよう、一歩下がって応援し、辛抱強く見守ることができるか、という点にあるのではないか。

 不確実性が高まる2017年、彼らの活躍は鍵となるだろう。メディアには、生命保険業界に限らず、若手リーダーの動向にフォーカスした報道を今後も期待したい。

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