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日本の未来は地方から文苑堂書店 福田本店に見た北陸モデル

2015/06/13

genre : エンタメ, 読書

作業着でもスウェットでも行ける店を

 野坂さんは、取材時点で入社2ヶ月目、2人のお子さんのそばに居る時間を作りたいと、地元高岡のお店に転職したばかりだ。名札には初心者マークが付いているが、前職の富山の大型書店の理工書担当、その前の島根県での文芸・文庫担当の経験を活かして、文苑堂書店福田本店では文芸書と理工書の棚を担当している。また、この秋に文苑堂書店が富山市内に出店する新店の理工書売り場の準備も任されている。

 そんな野坂さんに、どんな売り場作りをしているか聞いてみた。競合店のショッピングモール内の書店との差別化を図り、ロードサイド型店舗を活かして、車でさっと立ち寄れる店という。ビジネス書の売り場でビジネスマンが必要な本を買っていくように、理工書の売り場では、地元の農家や工場の方が、作業着のまま仕事帰りに寄って、買えるように品揃え、棚作りをしている。地元の作物についての本、農業経営書、土木の技術書、品質管理の資格書など、その本を今必要な人がすぐに買える売り場を目指したいとのこと。

仕掛けが売上げに結びつく、ビジネス書売り場。
ビジネス書の売り場を目標に、理工書売り場を順次整備中、まずは農学の棚から。

 文芸書の棚はまだまだこれから、まずは売り場担当者として入れるべきものを仕入れてきちんと品揃えし、他の目的で来店した方に手に取ってもらえる売り場にしたいとのこと。

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 文苑堂書店は地元の方に愛される書店をめざして、スタッフが山にカブトムシを取りにいって店頭で配ったり、夏祭りには浴衣、ハロウィンにはコスプレでお客様を迎えたりする、ちょっとしたハレの場としての演出にも熱心と聞く。そうしたお店の姿勢を、売り場担当者としてどう棚に反映させていくかを考えている。児童書やコミックスと一緒にジャンルを超えたフェアを仕掛け、売り場を盛り上げるのもこれからの目標だ。

児童書担当とも連携して盛り上げたい、レジ前のフェア棚。

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