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川嵜 次朗
2017/02/10

アベノミクス危機 浜田教授がすがる“シムズ暴論”

都内で講演するシムズ教授 ©共同通信社

 アベノミクスの生みの親、内閣官房参与の浜田宏一・米エール大名誉教授(81)の“師匠”が来日した。2011年にノーベル経済学賞を受賞した米プリンストン大学教授のクリストファー・シムズ氏(74)だ。

 シムズ氏が「時の人」となったのは、昨年11月。浜田氏が日経新聞紙上でアベノミクスの成果が思うように出ていないことを認めて、「考えが変わった」とし、そのきっかけをシムズ氏の理論と明かしたことだった。

「今や財務省も日本銀行も幹部陣は口を開けばシムズ理論。財政支出を増やせば物価も上がるという2000年代初めに流行った古い理論ですが、まさか浜田氏が今の日本に当てはめる気ではないかと警戒を強めています」(経済部記者)

 そのシムズ氏が来日。折しもアメリカのトランプ大統領が1月31日には、日本を名指しで「通貨安誘導」と批判した。アベノミクスの根幹だった金融緩和が曲がり角を迎えているだけに、2月1日の講演に注目が集まった。

 講演でシムズ氏は、日銀が掲げる2%の物価目標について「財政の介入がないと物価は上がらない」とし、個人や企業が安心して消費や投資を増やせるように、財政支出の拡大と同時に「消費増税の延期を宣言するべきだ」と提言した。インフレになれば、国の借金もおのずと減るというのがシムズ氏の持論で、消費増税を予測しているから、国民が金を使わないというのだ。

 講演後の討論会には、浜田氏も登壇した。日本の経済学者らが「財政拡大しても物価は上がらない」「むしろ不安が増幅する」と口々に疑問視するなか、ただひとり浜田氏が「これは活用できる」と主張。ただし「論拠もなくボソボソと話すので、会場は白け気味でした」(参加者)。

 財務省幹部が語る。

「安倍政権はアベノミクス第二の矢としてすでに財政を吹かし、消費増税を2度も延期しながら、低成長の経済を変えられない。よもや総理が耳を貸すとも思えないが、財政再建を放棄すれば国民がアホみたいにお金を使うという暴論が注目される世の中が恐ろしい」

 シムズ理論を「目からウロコが落ちた」と語る浜田教授。その学びに付き合わされる国民はたまったものではない。