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連載高野秀行のヘンな食べもの

高野 秀行
2017/02/21

猫食「ちゅ〜る」が日本の食卓を変える?

イラスト 小幡彩貴

 好き嫌いの激しい猫をもれなく虜にする謎の食品「ちゅ~る」の話である。

 さて、NHKの番組が放映されたあと、枝元なほみさんが私やスタッフを自宅に招いてくれ、打ち上げを行った。そのとき、またしても猫ちゃんがにゃーにゃー言って現れ、ちゅ~るを貪るので、「これ、おいしそう」「人間も食べられるんじゃないの」と誰ともなく言いだすと、枝元さんが即座に「ちゅ~るのカナッペ」を仕立ててしまった。

 クラッカーに蕪のスライスを載せ「まぐろ」のちゅ~るをかけ、ピンク胡椒とイタリアンパセリを散らした見事な一品。バーで頼んだら千円ぐらいしそう。味見してみたら「おおー」と声が出た。うまいのだ。バーのつまみとして十分通用する。シーチキンをとろとろにしてさらに旨味を加えたような、調味料なのか食べ物なのかよくわからない不思議な食感と味。世界のどこの国でも経験したことがない。

ちゅ~るのカナッペ

 他のペットフーズ同様、ちゅ~るにも塩分はほとんど含まれていないのに、適度に脂分があり旨味が濃厚なので物足りなさは全然ない。蕪との相性も抜群だった。さすが枝元さんである。

 旨味と魚(肉)っぽい食味があり、塩分ほぼゼロでマヨネーズのように使える便利さ。しかも他に「とりささみ」「とりささみ&日本海産かに」「かつお」などいろいろな味があり、レパートリーも豊富。

 これは人間用にしても受けるのではないか。「和食」の新しい展開になりうるのではないか。バーのつまみだけでない。塩分をとりたくない人、食欲があまりなくて咀嚼力や胃腸に問題のある病人にもうってつけであろう。レシピは枝元さんがベストなものを考えてくれるはずだ。唯一の欠点は値段が高いことだが、そこは大量生産でなんとか価格を下げてほしい。

 そのうち、猫と人間がちゅ~るを争う日が来るのかもしれない。

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