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連載近田春夫の考えるヒット

近田 春夫
2017/02/22

UVERworldの受け手に解釈委ねる“スキル”

『一滴の影響』(UVERworld)/『SNOW SOUND』([Alexandros])

絵=安斎肇

 UVERworldの新曲『一滴の影響』とはどんなものなのか。とりあえず無料動画投稿サイトを検索すると、ショートバージョンというのがあった。ライブの記録のようだ。新曲とはいえ、もうステージではおなじみのものなのだろう。

 映像はTAKUYA∞のMCから始まる。

 するとそのなんともクソ暑いこと。もとい熱さ! に思わず耳も目も奪われてしまった格好の俺だったが、正直申してスマートフォン的スピーカーではよく聞きとれないところもある。なので起こし違っていましたならご容赦をば。

 抄訳になるが、こんな箇所があった。

「一滴一滴の汗が素敵な方向に向かってくれるよ」

 早速のっけから申し訳ない。これはなんのこと? と俺は思ってしまったのである。

 主語は汗だ。しかも“向かってくれる”っていうんだから、この汗には意思があるってことにもなるわなぁ。いいたいのは「汗をかいた分だけいいことあるかもよ」みたいなことだぐらいホントは俺だってさぁ、わかってるんだけど(笑)。やっぱ舌ったらずは舌ったらずよね。

一滴の影響/UVERworld(SONY)滋賀県出身者6人組によるロックバンド30枚目のシングル。アニメ「青の祓魔師(エクソシスト)」OP。

 このMC(てかアジテーション?)と曲を改めて聞き直すと、全体がそういった“気持ちはわかるけど”的な、いってみれば“受け手側に解釈を委ねる形のいい回し”で終始構成されていることに気付かされる。なるほど、それこそがかえってファンたちをたまらなく昂奮させる“スキル”というものなのかもな……と妙なところに感心させられた次第。

 そういえば、音源と共に資料で送られてきた、どこぞの雑誌でのインタビュー記事における発言にある「思春期のダークサイドに身を落として見てきたもやもや」ってぇのも、俺にはちと意味不明だったんだけど、こっちの方の文責は本人じゃなくその雑誌の編集の方ですもんね。本人には罪のないことでした。失礼。

 ところで件の映像だが、よく注意してみると、絵はライブでも音はCD/スタジオ録音の音源のようだ。要するに“フェイク仕立て”に作られているということである。いやァ、これには――先にも述べた、おしゃべりぶりがあまりにも臨場感にあふれていたりしたとかもあって――もう少しで騙されるところだった。

SNOW SOUND/[Alexandros](UNIVERSAL)恋が芽生えそうなシチュエーションで有名なJR東日本「SKISKI」キャンペーンCM曲。

 何で見抜いたかというとボーカルだ。これだけメッセージ性の強い歌だというのに、口元が必ずマイクか何かの影に隠れていてアップにならない。すわ、最近何かと話題の“口パク隠し”? と鬼の首でも取ったかのごとく小躍りするも束の間。あっこれはライブの記録なんかではないれっきとした『一滴の影響』ショートバージョンと合点。なれば、よし口パクだろうとて全然問題はナシOKっす。そんなこんなでコレ、最近では出色の出来の映像と、流石の私もいわざるを得まい。

 [Alexandros]。

 真偽ともかく検索するとこのバンド、やたらパクリ疑惑って出てくるんですけど。いずれにせよ頼もしいことだ。

今週のGet Wild!「このあいだ、代官山で小室哲哉氏と対談したんだけど、TKといえば、シンセサイザーをばりばり使ったトラックメイカーという印象が強いじゃん。でもその彼も、音楽つくるより歌詞を書くほうが重要なんだと言っていたのが印象深かったね」と近田春夫氏。「おかげさまで大盛況だったよ。楽しい時間でした。みんな有難うね!」

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