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「現金の落とし物」年間36億円。過去最高を記録した“興味深い”理由

日本の美徳に触れた滝クリの名演説(13年9月7日) ©共同通信社

「もし皆様が東京で何か落とし物をしても、きっとそれは戻ってきます」

 滝川クリステルの「おもてなし」スピーチでも触れられた日本人の美徳が新たな領域に突入していた。都内で昨年、落とし物として届けられた現金の総額が約36億円と過去最高額を記録したのだ。

「警視庁によると、現金はバブル期の1990年の約35億円を超えて過去最高だそうです。現金だけでなく、財布や傘など全体の届け出件数も383万件で過去最高でした。2001年にデビューしたJR東日本の『Suica』などのICカードや、スマートフォンでも決済ができるなど、キャッシュレス時代の現代に、なぜこのような数字が出たのか不思議です」(警視庁担当記者)

 単純計算で日に約1000万円が届けられていることになる。90年に約35億円を記録した翌年からバブル崩壊にあわせるかのようにガクッと減り、以降は横ばいを続けていた。底を打ったのは09年の約26億円。それから7年は増加の一途を辿っている。

 警察関係者はこう分析する。

「防犯意識や社会的モラルの向上とともに、落とし物は届けるものという意識が高まっているのではないか。刑法犯の認知件数(捜査機関により犯罪発生が認知された件数)という補助線を引いてみると、落とし物の金額の推移はその数年遅れで連動していることがわかる。刑法犯の認知件数は都内で99年から毎年戦後最多を記録し、02年には約300万件に達した。しかし03年以降は減少を続けている」

 ただ、もっと興味深い数字が発表には隠されていた。36億円のうち、持ち主に戻ったのは27億円で、9億円は戻っていないのだ。

 民法第240条により、落とし物は3カ月以内に所有者が判明しないときは、拾得者が所有権を取得する。警察から拾得者に連絡があるが、拾得者が申し出なければ、落とし物が届けられた関係自治体、例えば警視庁なら東京都の歳入に計上されるという。

「振り込め詐欺などの犯行グループは、現金をその辺に隠しておいて後で受け取るということもやる。そういった特殊詐欺や脱税がらみの現金を遺失しても持ち主はダンマリを決め込むだろう」(同前)

 金は天下の回り物。これからは下を向いて歩こうか。

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