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森岡 英樹
2017/02/24

東芝がハマった原発無間地獄。ウエスチングハウスがなければ……

会見で謝罪した綱川社長 ©共同通信社

 2月14日、東芝はアメリカでの原子力事業の損失が7000億円を越えるとし、予定していた正式な決算の発表を延期した。

 この日、日本を代表する電機メーカー・東芝は死んだと言ってよいだろう。医療機器販売などの黒字事業を既に切り売りし、虎の子の半導体事業も過半数を超える株式売却を余儀なくされる。事実上、東芝は原子力事業しか残らないことになるのだ。

「数字で見る限り、正しい判断とは言いにくい」

 14日の会見で、ウエスチングハウス(WH)買収について聞かれた綱川智社長は、こう語った。

 東芝は、当時の西田厚聰社長が主導し、2006年、アメリカの原発メーカー・WHを買収し、原子力事業で世界のトップに立った。

 だが、WHは巨大なブラックホールだった。この2年で、WHに投じられた資金は1兆円近い。

「海外企業の買収はハイリスクハイリターン。キリンもブラジルのビール事業会社を約3000億円で買収したが、うまくいかず、13日に約770億円で売却すると発表したばかり。高い授業料を払ったわけですが、東芝も早めにWHを売って損切りしていれば、今も優良会社だったでしょう」(メガバンク幹部)

 だが、東芝は足抜けすることができなかった。WHに約8000億円の親会社保証を行っており、原発建設を継続していかねばならないのだ。

 中国やロシアの原子力企業が関心を持っているとも言われるが、安全保障の観点から企業買収を審査する米国の外国投資委員会の承認を得るのは、ほぼ不可能と見られる。

「原子力事業は金額が大きい上、各国の国策と直結するため、純粋なビジネスとしての経営判断が難しい。福島第一原発の事故以来、原発は世界的にハイリスクなビジネスとなった。日本では日立、三菱重工も原子力事業を本体から切り離す動きがさらに加速するでしょう」(同前)

 菅義偉官房長官も東芝について、「国内における原子力事業、特に廃炉、汚染水対策にも関与している企業であるため、今後の対応について、政府としてしっかり注視していきたい」と述べた。

 原発無間地獄に嵌った東芝。もはや、頼みは国しかない。