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崔 碩栄
2017/02/25

サムスン副会長の逮捕で、朴大統領に捜査の手は届くか

取調べのため特検事務所に入る李氏 ©共同通信社

 2月17日、韓国・サムスン電子の李在鎔(イジェヨン)副会長(48)が逮捕された。李副会長は、李健熙(イゴンヒ)会長の長男で、ソウル大学、慶応義塾大学、ハーバード大学でエリート教育を受けた「皇太子」。年間300兆ウォン(約30兆円)の売上を誇る巨艦サムスンの実質的トップの電撃的な拘束劇は、韓国社会に大きな衝撃を与えた。

 特別検察(以下、特検)は1月19日に最初の拘束令状請求が棄却された後、容疑と証拠を追加。従来の賄賂供与、横領、偽証に、今回新たに、財産の国外逃避、犯罪収益隠匿の容疑を加えて、ついに拘束に至った。

 韓国経済をけん引する企業の混乱で、経済的な打撃も予想されるが、手錠をかけられた「皇太子」の姿に国民は喝采を叫んでいるという。

「ナッツ姫騒動もそうでしたが、国民の財閥に対する反発感情は強い。そうした声に押される形で、検察が動かされた面もある」(現地記者)

 今、韓国のマスコミは競い合うように「皇太子」が入っている拘置所の劣悪な寝床、食事などを報じて、その没落物語を国民に“カタルシス”として提供している。

 このタイミングで特検が逮捕に踏み切ったのはなぜか。

「今回の件は、弾劾を焦る特検の暴走と見る向きもありますが、実は、今が朴槿恵大統領まで捜査の手を伸ばせるか否かの瀬戸際。というのも野党の指名により構成された特検の捜査期間は2月28日までだからです」(同前)

 焦点となるのは3月中旬と言われている憲法裁判所の「弾劾可否判決」だという。

「もし弾劾が可決されて、朴大統領が不訴追特権のある大統領の職を解かれて一般人となったとしても、その前に特検の捜査期間が終わっていたら、起訴はできない」(同前)

 ただし、「大統領の許可があれば」捜査期間は1回だけ、30日間延長することができる。現在、その許可を出せるのは、大統領代行の黄教安総理ということになるが、黄総理は延長を拒否する意思を明確に示している。

「そこで特検としては、李副会長を逮捕し、国民にアピールすることで、黄総理が延長を許可せざるをえない空気をつくる狙いがあったと見られています」(同前)

 朴大統領の起訴にかける韓国特検の執念は実るのか。