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連載近田春夫の考えるヒット

近田 春夫
2017/03/01

「カントリー・ガールズ」新曲の作詞家の文学的才能に注目!

『Good Boy Bad Girl』(カントリー・ガールズ)/『MAGIC』(AAA)

絵=安斎肇

  カントリー・ガールズ――この頁担当の若者の説明によればカントリー娘。のアップデート版のようなもの――の新譜『Good Boy Bad Girl』にはなかなか嬉しいものがあったなぁ。さて……。

 web上で見つけた映像付き音源の再生を始めると、マイナーキーのリフを中心とする構成のイントロからしてどこか男性的で、女子アイドルらしからぬとまではいわぬにせよ、そのプロデュースの根底に、他の同業とは差別化を図りたいといったような意識を、うっすらとではあるが嗅ぎ取ってしまった俺の勘は、果たしてオッケーなのか?

 好奇心に火をつけられたカタチだ。もう少しチェックをせねばと観察を続けた。

 すると私はサウンド以上にもっと別のことに興味がいくようになった。

 画面には歌詞がスーパーインポーズされている。歌唱だけではわかりにくい箇所もあるので文字を追っていると、ところどころ――男性一人称代名詞の使い分けであるとか――何だか面白い。色々と、日本語ならではの遊び方を心得ているのが伝わってくる感じなのである。

Good Boy Bad Girl/カントリー・ガールズ(ZETIMA)作曲は星部ショウ。アイドル歴15年・嗣永桃子がこの曲で芸能界引退することに。

 よくjpopにありがちな「コレ書いたひと、もともとは音作りが仕事なのだろうなぁ」と、ついそんなふうに思わずにはいられないような“雰囲気だけの詞作”とは一線を画す、その、いわば“ちゃんとしたスキルを使った”作詞っぷりに私は惹かれていった。

 繰り返しになってしまうが、jpopには――作曲家が作詞を副業でこなしているケースの多いこともあって――本当にコトバで勝負出来ている楽曲は少ないといわざるを得ない。そんななかで、この『Good Boy Bad Girl』には、久々歌詞によって輝いている作品の趣があったのだ。

 少なくとも俺はそう感じた。

 そこで書いたのはどういう人なのか経歴を調べていくと、当初は作家を目指し「すばる文学賞」の二次選考にまで上ったこともあるらしく、やっぱこの作詞家は実際にコトバから入ってきたひとなんだ!と、ひとり納得したものである。冒頭に述べた、嬉しいものがあったとは、実はこれだ。

 見渡せば曲書き/トラックメーカーならゴマンといるのだろうが「私は(専業の)作詞家でござーい!」と堂々名乗りをあげ、そしてまた売り上げも堂々という存在はいま秋元康のみである。それをひとりとして不甲斐ないこととは思っていない、そうとしか映らない業界人たちに対し、「誰もちゃんと歌詞なんか書いてないじゃんさ!」と。ひょっとしてこの作詞家は一石を投じようとしている?

MAGIC/AAA(AVEX)昨年レコード大賞で本命と目されていたグループの今年1枚目。RAP詞はメンバーの日高光啓(SKY-HI)による。

 ♪ギターコード覚えても/歌詞がおもいつかない

 なる一節に込められた想いとは一体何なのであろう。

 児玉雨子こそ、いま最注目すべきjpopびとの一人ではあるまいかと。俺の勘はそう嗅ぎ取ったのだったが……。

 AAA。

 もうjpopというよりはミュージカルのひとたち? みたいよねこのキャラ作り(笑)。

今週のメルト「喉元過ぎればというけれど、あれほど騒いでいた福島原発の件、本当に扱いが小さくなったのは不思議だよね。最近のニュースだとむしろヤバさが増してるのに。まじで“チャイナ・シンドローム”かもね」と近田春夫氏。「いま思えば、リオ五輪で安倍首相がマリオの格好でトンネルから地球の反対側に飛び出たってのは、最高の寓意だったね」

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