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連載文春図書館 著者は語る

『洞窟ばか』吉田勝次はどうやってメンタルを鍛えたのか

入った洞窟は1000以上。探検家が見たすごいもの

『洞窟ばか』(吉田 勝次 著)

「28歳ではじめて洞窟に入った時、圧倒的な暗闇と異様な雰囲気にびっくりしました。その体験はあまりに強烈で、すごい、すごい、全部がすごい! と心の中で叫んでいました。もう大好きな女の子に出会ってしまった以上の体験。こいつと出会うために俺は生きてきたんだと思った」

 TBS『クレイジージャーニー』などで話題沸騰の男・吉田勝次。国内外で前人未踏の地下世界に挑み続けてきた洞窟探検家が、初の著作『洞窟ばか』を上梓した。これまで1000以上の洞窟に挑んできた壮絶な体験が熱く綴られている。

「洞窟探検で、とくに危険なのは水中ですね。レギュレーターをつけてタンクを背負って、狭い水の通路を進んでいく途中岩に引っかかって動けなくなることがあるんです。戻るに戻れず、こりゃパニックになったら生きて帰れないなと思う瞬間が。奈良のある洞窟で前にも後ろにも進めなくなった時、天井側の水面がわずかにゆらいでいたので、一か八かで上に向かったら別の部屋があって命拾いをしたことがありました。同じ洞窟で、戻りのルートで水が濁っていたため全然違う部屋に出て迷ってしまい、心底びびったことも(笑)。洞窟探検はハートが強くないとやれないですね」

よしだかつじ/1966年、大阪府生まれ。洞窟探検家。建設業の傍ら20代後半で洞窟探検にのめり込み、これまでに入った洞窟は国内外で1000以上。洞窟のプロガイドとして、テレビ番組での洞窟撮影、学術調査、研究機関からのサンプリング依頼などを請け負う。

 中国では、ロープ1本で300メートルの縦穴を降りていく時にアンカーが抜けて落下――途中で止まったがあわや死にかけた。吉田のメンタルの強さはどのように鍛えられたのだろうか。子供の頃は喧嘩ばかりしている問題児だったという。

「10代の終わりに急に悔しくなったんです。どうせダメな奴だろうと思われている自分がそうでないことを示したかった。でも何をやったらいいか分からない。水商売や飲食業をやり、体力さえあれば何とかなった建設業に飛び込んだら、ちょうど猫の手も借りたいバブル期で仕事はいくらでもあった。部活の10倍キツイ肉体労働に3年間1日も休まず打ち込んだことで、心身が相当鍛えられましたね」

 自身で興した建設会社が軌道にのったころ洞窟探検に出会い、以来、未知なるものに感動し続けたい思いが吉田を駆り立ててきた。

「地球上で最後の未知は地面の下だと思う。世界最深のグルジアの洞窟でも、地表からわずか2キロ。地下にはまだまだ未知の領域が広がっています。深い地層には、3億年前の海の中からできた化石や数十万年かけてつくられた鍾乳石が眠っている。地球の歴史そのものが見えるんです」

暗闇の先に広がる誰も見たことのない地下世界。ロープ1本で400メートルの縦穴を下りたり、最長11日間も洞窟内に滞在したり……、危険を乗り越えたその先には圧巻の鍾乳石のホールや氷の柱、美しい棚田のプールが現れる。人なつっこくて怖がりでロマンチストな洞窟探検家の探検記。未知に出会う衝撃の1冊。

洞窟ばか

吉田 勝次(著)

扶桑社
2017年1月8日 発売

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