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桐谷健太「好きなことを続けていたら、誰かに気づいてもらえた」

出演作『彼らが本気で編むときは、』と、最近の躍進について

2017/02/25

genre : エンタメ, 芸能

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成功のひみつ――いま目の前にあるものを、遊び心を持って全力でやる

 昨年は、音楽番組に出させてもらったり、CDを出せたりとおかげさまで新鮮な一年でした。でも、前から好きで歌っていたし、三線も昔から弾いていた。僕自身のスタンスは、前もいまもたいして変わっていないんです。自分からなにか狙ったとか、しかけたとかいうことより、むしろ好きなことを続けていたら、誰かに気づいてもらえたという感覚です。

 ほかにも、音楽番組に出ているとき、人の話を黙って聞く俺の立ち姿を見て、「クールな役もいいんじゃないか」と思ってくださったプロデューサーの方もいらして、そういう役のオファーが来たり。ほんとに、何があるかわからないですよね(笑)。

 自分が好き、面白いと信じてやっていたことが、自然に仕事につながっていったのが嬉しいし、自分らしいなと思います。

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 たとえば俺は、仕事選びは事務所に一任しているんです。第一に事務所を信頼していますし、自分で選ぶと偏ってしまいそうなのと、事務所はいつも、その時の俺が一生懸命頑張って手を伸ばしてギリギリ届くような、挑戦と成長をさせてくれる役をちゃんと選んでくれるんですよ。だから、全部自分でやるんじゃなくて、その道のプロに任せることも大切なんやないかと思います。

 衣装も、スタイリストさんや衣装さんに任せます。もちろん直感でなにか違うと思ったら、意見を言えばいい。全部自分の思う通りにやろうとしたら、カラダがいくつあっても足りなくなる。三線も自分で作る、マイクも組み立てるってことになっちゃいますもんね(笑)。任せるところは人にお任せして、自分の持ち場で最高のパフォーマンスをするのがええやないかと思っています。

 

役でゆさぶられても、「真ん中」にいつでも戻れるように

 俺の趣味は、散歩とか銭湯なんですけど、リラックスして、カラダを休めて、脳みその風通しをよくするのは大事ですよね。ちゃんと寝る、とかね。カラダが疲れてくると考え方もねじ曲がってしまう。

 自分なりの「真ん中(中心軸)」を知っていないと、疲れていることもわからんくなるから。真ん中がわかっていたら、ずれてもすぐ戻せる。役者って職業は、トリッキーな役をすることもあるし、精神的に振れ幅が大きいから、真ん中に戻れるようにしておかないと、病気になってしまうと思うんです。

 デビューしたてのころは、現場を離れても役に入りこんでいるほうがかっこええんちゃうかと思って、役にのめり込んだときがありました。でも、そうしてバランスを崩したら、周りの人を悲しませる。映画を観てくれる人を喜ばすことに必死になって、周りの人を傷つけていたら、それはかっこよくないなと気づいたんです。周りの人に喜んでもらって、作品を見る人にも気持ち良くなってもらうのが最高やから。

 ついこの間37歳になりました。ええ具合に中途半端な数字で気に入ってます。抱負は……「清らかに、爽やかに(笑)」。でも、抱負って年末には忘れちゃいますよね。それより1日、1日を大事にしたい。いやなことはその日に直して、ええところは伸ばしたい気持ちのほうが強いかもしれないです。

 怖いものはないんじゃないか? そんなわけないですけど(笑)、でも怖がっててももったいないかなと思います。今日の空は今日しか見られへんからね。

 

文=黒瀬朋子 写真=杉山拓也/文藝春秋

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きりたにけんた/1980年生まれ。大阪府出身。ドラマ「九龍で会いましょう」(02EX)で俳優デビュー。主な出演作にドラマ「ROOKIES」(08 TBS)、「龍馬伝」(10NHK)、「カインとアベル」(16 フジテレビ)、映画『オカンの嫁入り』(10)、『バクマン。』(15)、『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(16)など。昨年アルバム『香音—KANON—』をリリースした。

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『彼らが本気で編むときは、』
「テディ審査員特別賞」「観客賞(2nd place)」ダブル受賞!
(パノラマ部門、ジェネレーション部門 正式出品作品)

 小学生のトモ(柿原りんか)は、母親が家を出たため、叔父のマキオ(桐谷健太)の家に向かった。マキオは恋人と暮らしていたが、恋人のリンコ(生田斗真)はトランスジェンダーの女性だった。

脚本・監督:荻上直子 出演:生田斗真、桐谷健太、柿原りんか、ミムラほか 配給:スールキートス

2月25日新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー

© 2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会
桐谷健太「好きなことを続けていたら、誰かに気づいてもらえた」

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