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伊藤 雅将
2016/03/31

ひょっとしてその疲れは春バテかも

寒暖差で自律神経が不調に。効果的な対策を

source : 週刊文春 2016年3月31日号

genre : ライフ, ヘルス

 暖かくなったり、寒くなったりが繰り返される日本の春。病気とまではいかないが、調子がよくない。そんなことありませんか。それ、ひょっとしたら「春バテ」かも。寒暖の差、気圧の変化に体や心が悲鳴をあげているのです。専門家が明かす春バテ対策法とは――。

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イライラ、肩こりなどは春バテ特有の症状かも

「春先は不思議と体調が悪くなります。昼間にやたらと眠くなり、肩こりの症状もこの時期は特にひどい」(都内在住の50代女性)

 生活と気象の変化がめまぐるしいこの季節、夏バテならぬ“春バテ”が蔓延している。

 医師や企業などでつくる健康情報ネットワーク「ウーマンウェルネス研究会」は昨年末、意識調査を行った。首都圏在住の20代〜50代の男女665人に聞いたところ、春先(3〜4月)に何らかの不調を感じたことがある人は全体の約8割。男性72.8%、女性86.8%という結果だった。

 具体的な症状では「イライラする」「気分の落ち込み」「肩こり」「手足の冷え」「体がだるい」などの回答が目立つ。夏バテにはない“春バテ”特有の症状が多かったのだ。

「高気圧と低気圧が頻繁に入れ替わるこの時期は、自律神経の切り替えがうまくいかなくなります」

 こう語るのは、体の“冷え”対策に詳しい東京有明医療大学の川嶋朗(あきら)教授。

 自律神経とは、心臓や消化管の動き、発汗作用など、体内で自動的に働いている神経のことだ。

「気圧が下がれば空気中の酸素が微妙に減るので、その低い酸素分圧に耐えられるように体が合わせようとします。つまり動かなくてもいいように、自律神経はお休みモードの眠っている状態に持っていこうとする。最近の傾向として、お休みモードから戻せない、あるいはそのままお休みモードになってしまう方が増えている。このため春先に『なんとなくやる気が起きない』とか『だるい』という気分になるのです。敏感な人だと頭痛を感じることもある。四季がある日本ならではの現象です」(同前)

 天候が変わりやすい時期で、毎日の寒暖差が大きいこともダメージになる。

「気温によって自律神経を次々に切り替えないといけないのですが、そこにもエネルギーが必要となります。そこの切り替えで余力がなくなり、さらにバテてしまうのです」(同前)

 自律神経には、昼間の活動時に優位になる交感神経、睡眠時やリラックスしている時に優位になる副交感神経の二種類がある。このバランスが重要だが、切り替えをスムーズに出来ない人が最近増えているという。

「乗り物、エスカレーター、エレベーター、エアコン、便利なものがどんどん増えて、体を自分で調整する必要がなくなっているからです。私たちは本来どんな環境でも一定の状態を保てるような自己治癒力や自己調節力を持っていますが、それが少しずつ衰えている。

 体を動かさなければ筋肉が衰えます。熱をつくる三割は筋肉が主体ですから、筋肉が衰えれば体は冷える。そして血液は温度が下がるほど粘度が上がります。つまりドロドロになる。十分に酸素や栄養素が行き渡らなければエネルギーは作れません。血のめぐりが滞れば、肩こりも起こりえます。こうして“バテる”という現象が起こるのです」(同前)

春めいても“防冷”対策を忘れずに

 では“春バテ”を予防するにはどうすればいいのか。

 重要なポイントは「とにかく体を温めること」だと川嶋教授は語る。

「季節負けするような体力がない方は『低体温』が非常に多い。体温を少しでも上げて、体内でスムーズに代謝や免疫が働くようにしましょう。そこで最も効果的なのは『ぬるめの入浴』です。日本温泉気候物理医学会の研究だと、お風呂の温度は40度を境にして自律神経が切り替わります。高い温度では交感神経、低いと副交感神経が優位になる。この医学会が行う温泉旅館の評価だと、夜の温度は下げてお休みモードに、朝の温度は上げてお目覚めモードにという心遣いがあると評価が高い。いまはストレス社会であることを考えると、副交感神経が優位になるように、少しぬるめの温度がいいでしょう」

 目安となるお湯の温度は38〜40度。10〜20分はゆっくり浸かろう。

「副交感神経を優位にする入り方ですから、タイミングは夜です。特に炭酸ガスの入浴剤を入れると効率が良くて、炭酸が皮膚に吸着して血管が開いてくるのでおすすめです」(同前)

 外出時には衣類での温度調整も欠かせない。産業医で健康科学アドバイザーの福田千晶医師が語る。

「朝晩は冬の寒さなのに、昼間は20度まで上がります。男性ならスプリングコートやマフラー、女性ならブラウスにジャケットと重ね着で工夫をするなど、いつでも調節がつく衣服を心がけましょう。女性のトレンチコートが流行っているので、これを取り入れてもいいでしょう。ストールも常に持ち歩いていると便利です。電車の中で汗をかいて外に出てまた冷えれば、よけいに体力を消耗します。色は春っぽいけど、よく見ると厚手のものだったりと“防寒”ほど大げさではなくても“防冷”くらいの感覚を持ったほうがいいですね」