昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

梶原 紀章
2017/03/02

【ロッテ】チームスローガンが「翔破」に決定した理由とは?

文春野球コラム ペナントレース2017

個性あふれる各球団のスローガン

 今年も各球団のチームスローガンが出そろった。しかし、いつからここまでプロ野球のスローガンは凝るようになってきたのであろうか。文言だけではなく、デザインも含めて千差万別である。ファイターズ「ファンビシャス」、ホークス「1(ワン)ダホー!」、我がマリーンズは「翔破 限界を超えろ!」、ライオンズ「CATCH the ALL つかみ獲れ!」、イーグルス「Smart & Spirit 2017 東北・夢・再び」、バファローズ「野球まみれ 一勝懸命2017」。パ・リーグだけを見渡しても実に個性的である。

スローガンを手に持つ伊東監督 ©千葉ロッテマリーンズ

 セ・リーグも含めてまず思う事は、一時は横文字全盛期であったが、今年は力強い日本語が目立つ。そしてファンの方からすれば当たり前と思われるかもしれないが、どの球団もダブっていない。そもそも各球団、スローガンは事前にやりとりをしていないのでマイナス思考な広報マン的にはいつもダブっていないかが、まず不安になってしまう。これまた発表の時期も各球団それぞれが思惑を持ちながら事前のやりとりをせずに行い、マリーンズはここ数年1月1日元旦報道(発表は12月31日大晦日で報道解禁が1月1日)。球団の新年最初のニュースという重要な位置づけである。もし、ダブってしまった場合はおそらく先出し勝ち(まだ、そういった事態に陥っていないのでなんともいえませんが)。後出しで、なかなか同じ文言は出しにくく、急きょ差し替えになるのではと考えると想像を絶するほどショッキングな出来事だ。元旦発表という比較的遅いタイミングのマリーンズとしては最悪のことを考えるだけで震え上がってしまう。

 ちなみにマリーンズはスローガンを考えだすのはシーズン終了1週間後ぐらい。クライマックスなどのポストシーズンも含めてすべてが終わり、チームがしばしの休息を挟み、本拠地のグラウンドで再始動をするタイミングで伊東勤監督と打ち合わせをしている。そこで指揮官の今季の振り返り、来季のビジョン、意気込みを聞き、スローガンの意向やイメージを聞いた上で一度、持ち帰る。その後、何度かやりとりをさせていただき11月の秋季キャンプ中にデザインを含めて数十パターンを見てもらい、ああでもない、こうでもないの議論を繰り返し、絞込みや形を作り上げ、11月下旬に原型が完成となる。それを再度、細部調整をして最後の会議が12月上旬に行われる新入団会見前(これは毎年、定番)。監督とは2時間ほど早めに会場近くに集合をし、そこで最後の議論を交わす。「もっと、ロゴは大きい方がいいのではないか?」、「金色はもっと濃い方が力強い」。そんな監督の意見を聞く時間を経て、いよいよ完成。その場で監督がロゴを手に持った写真を撮り、発表資料作成に入るという流れだ。

「翔破」に込められた思いとは

 延々とスローガン完成までの道のりを紹介してしまったが、要はマリーンズが「手作り」で製作をしていることを声高に伝えたいのだ。直接、聞いたわけではないので定かではないが、広告代理店、PR会社などが案を出してくる球団が多いと言われる中で、監督と球団職員、スタッフが熟考しながら翌年のスローガンを作り上げている(もちろんデザインに関してはデザイナーの方にお願いしていますのであしからず)。そもそも「翔破」というメインスローガンは伊東監督が就任をした直後の12年オフに提案をいただいたもの。当時、伊東マリーンズ初年度となる13年シーズンのスローガンに頭を悩ませていた時に「いろいろと考えていたら、ちょうどいい言葉を見つけたんだ」と伊東監督が目を輝かせながら語ったことがキッカケだ(あの瞬間は忘れません。コーヒーを飲もうと都内某レストランのドアを開けた瞬間でした。寒い冬の日でした)。

 「翔破」。耳慣れない言葉に正直、造語だと思えた。しかし、辞書で調べてみると確かに存在する。言語の専門家の方からも「素晴らしい言葉だ」とほめていただいた。意味は鳥や飛行機などが,目的地まで長い距離を飛びきること。鳥が空を飛び通す事。飛行機などが、全行程を飛びきること。マリーンズはカモメという鳥をキャラクターにしたチーム。その前年の12年シーズンが最初は順調に飛んでいたものの、途中から失速してしまった点を踏まえると、この「翔破」がピッタリだと感じ取った。

 それから5年、メインスローガンは変えず、サブタイトルを付ける形で続けている。ちなみにサブタイトルは13年「頂点を目指して」、14年「頂点へ、今年こそ。」、15年「熱く!勇ましく!!泥臭く!!!」、16年「熱き心で!」、17年「限界を超えろ!」。

 いずれも指揮官のシーズンを戦う上での想い、選手たちへのメッセージ(檄)が強く反映されている。今年も12球団のスローガンが出そろった中、どのスローガンが世の中で強く認識され定着する事になるかは分からない(大体、優勝チーム。15年のホークス「熱男」など)。ただ、一つマリーンズが胸を張れる点は最初から最後の完成の瞬間まで伊東監督と話し合い、丁寧に丹念に熱意をもって作り上げたスローガンという事だ。

 「優勝は限界の手前にはない。限界を超えたところにある。選手一人ひとりが限界を決めつけず、それぞれが限界を怖れずに挑んで欲しい」

 現役時代、14度のリーグ優勝、8度の日本一を経験。セ・リーグ6球団すべての球団と日本シリーズで対戦した栄光の実績を誇り、2017年1月に殿堂入りも果たした指揮官が自身の経験に基づいて、生み出した言葉の尊さ。その魂が込められたチームスローガンが今年の秋、大きくクローズアップされることになることを切に願っている。長々と書いてしまったが、つまりは果たしてなにが言いたいのだろう(ネットは制限がないので長々と書けてしまいます。スイマセン)。凝ったもの、カッコいいもの、キャッチーなもの、12球団色々とスローガンはあるが、一番、人の魂が込められているのはマリーンズの「翔破 限界を超えろ!」だ!という事だろう。

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。

 

  HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。

はてなブックマークに追加