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連載歴史・時代小説の歩き方

干支の仇を八戸で討つ――ひつじ小説を捜して

2015/01/03

genre : エンタメ, 読書

 あけましておめでとうございます。未年ですね。

 小説の世界で羊と言えば、やっぱり村上春樹『羊をめぐる冒険』(講談社文庫)。昨年『満願』(新潮社)でミステリーランキングを総嘗めにした米澤穂信には『儚い羊たちの祝宴』(新潮文庫)という短編集もある。そうそう、希代の殺人者の人生を描いた伊集院静『羊の目』(文春文庫)は名作。ガツンと来るぞ。

羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)

村上 春樹(著)

講談社
2004年11月15日 発売

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羊をめぐる冒険(下) (講談社文庫)

村上 春樹(著)

講談社
2004年11月16日 発売

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満願

米澤 穂信 (著)

新潮社
2014年3月20日発売

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儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)

米澤 穂信 (著)

新潮社
2011年6月26日発売

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羊の目 (文春文庫)

伊集院 静(著)

文藝春秋
2010年5月7日 発売

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 洋モノならトマス・ハリスの『羊たちの沈黙』(新潮文庫)に、フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(ハヤカワ文庫)など、超メジャー級の作品が勢揃い。比喩や象徴ではなくホンモノの羊が探偵役を務めるレオニー・スヴァンの『ひつじ探偵団』(早川書房)はキュートだったなー。

羊たちの沈黙〈上〉 (新潮文庫)

トマス ハリス(著),高見 浩(翻訳)

新潮社
2012年1月28日 発売

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羊たちの沈黙〈下〉 (新潮文庫)

トマス ハリス(著),高見 浩(翻訳)

新潮社
2012年1月28日 発売

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アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

フィリップ・K・ディック(著),浅倉久志(翻訳)

早川書房
1977年3月1日 発売

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ひつじ探偵団

レオニー スヴァン (著)

早川書房
2007年1月発売

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 うん、未年だし、羊が出てくる小説を紹介するっていいかも。ナイスアイディアだ。やったね、楽勝! → 早速、羊が出てくる歴史・時代小説を捜そう。→ 本棚を眺める。→ ちょっと考える。→ 再度本棚を眺める。→ 検索する。→ ……。

 羊って、日本にいなかったんじゃね?(←イマココ)

 何がナイスアイディアかと。何が楽勝かと。私が北川景子なら櫻井翔から「お嬢様はアホでらっしゃいますか?」と言われる場面だ。それは羊じゃなくて執事だ。しかも執事も日本の時代小説には出てこないよ!

 と思ったら、いたのである。いや、羊じゃなくて。執事が。鎌倉時代の政所の要職や、室町時代の将軍補佐職を執事と呼んでいたそうで、有名なところでは、高師直(こうのもろなお)が執事だったという。だ、だめだ、高師直が「お帰りなさいませ、塩冶様」とかって言ってる絵が浮かんできたっ! 意味がわからない人は歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』をご覧下さい。

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