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プーチンをめぐる“黒い十人の女”

踊る美人広報官、ツンデレメダリスト、スノーデンにフラれた女……

2017/03/10

genre : ニュース, 国際

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 歴史は時の権力者のみにて作られるものにあらず。絶対的権力者プーチンばかりが注目されがちだが、その陰でしたたかに暗躍する女性たちの存在を忘れてはならない。将来の大統領候補に隠し子騒動の渦中の人物、アメリカ帰りの美人スパイにプーチン批判の急先鋒などなど、プーチンへの愛憎入り乱れる強烈キャラの現代ロシア女性10人を一挙紹介。ロシアは女で回ってる!

1. ナタリア・ポクロンスカヤ

 ロシアによるクリミア編入の際、「美しすぎる検事総長」として一躍話題の人に。その後、昨年9月に国政へと鞍替えし、現在は下院議員として活躍中。1年生議員ながら下院資産公開委員長に抜擢されている。制服萌えしていた層による熱狂ぶりはすっかり落ち着いてしまったものの、もうすぐ37歳となる現在もその美貌は健在で、人気と知名度から将来の大統領候補として推す声も。一方で、年末のラジオ出演で再婚していることをさらりと告白。お相手は元同僚で、仕事は機密上明かせないのだとか。これまでSNSの類はしていなかったが、ロシア版フェイスブックと言えるVK(フコンタクチェ)にアカウントを開設し、愛娘アナスタシアと買い物を楽しむ写真を公開している。プライベートの小出し加減はなかなかのもの。

ヘアスタイルは最近ショートボブに落ち着いた模様。(VKより)

2. アリーナ・カバエワ

 一時プーチン大統領と再婚間近とも噂された元新体操五輪金メダリスト。現役引退後は6年あまり下院議員を務め、2014年にロシア最大のメディアホールディングス「ナショナルメディアグループ」会長に就任。新体操の女王からメディアの女王へと華麗な転身を遂げている。2008年にプーチンの愛人疑惑、2009年に男児出産説、2014年にリュドミラ夫人と離婚したプーチンとの再婚説、2015年にスイスの病院で出産説、などなどこれまで数々のゴシップ報道に晒されてきたが、いずれも否定している。将来、軟体動物のように寝技から抜け出す柔道選手が現れたら、それはカバエワとプーチンの隠し子かもしれない。これはちょっと見てみたい。

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味覚糖のCMや映画「RED SHADOW 赤影」に出演した謎の経歴を持つ。©getty

3. アンナ・チャップマン

 アメリカで諜報活動をしていた女スパイ。本名はアンナ・クシチェンコで父親は元KGB幹部という筋金入りの家系。チャップマン姓は2002年、英国人前夫との結婚によるもので、離婚後も使い続けている。ニューヨークでは不動産会社やベンチャー企業の敏腕女社長を隠れ蓑に、その抜群のスタイルで要人にハニートラップを仕掛け、核弾頭開発計画について情報収集していた。2010年にFBIに逮捕され、米ロ間のスパイ交換で帰国。元美人スパイの肩書きを最大限に生かし、現在はファッションモデル、テレビ番組司会者とやりたい放題。2015年まではファンド・サービス・バンクという銀行で取締役をしていたが、その略称がFSBでロシアの諜報機関と同じという洒落たオチも。

ツイッター上でエドワード・スノーデンに求婚したが、体よく断られた。(VKより)

4. ワレンチナ・マトヴィエンコ

 サンクトペテルブルグ市長を経て、2011年からロシア初の女性上院議長を務める。保守的なロシア人の間で女性政治家はなかなか好まれない傾向があるなか不動の人気を誇り、「ロシアで最も影響力のある女性ランキング」でたびたび1位に選ばれている。次期大統領との呼び声も高い(ロシア最高権力者の“つるふさの法則”にも合致)。昨年12月のプーチン来日に先駆け、露払い役として日本を訪問。長崎では原爆資料館見学後に献花を行なった。寿司、刺身、しゃぶしゃぶなど日本食は大のお気に入りで、滞在中はふぐ料理にも挑戦。警護の都合上、お付きの者に毒見させてから1時間後に食べていた。

見た目は典型的なロシアのおばちゃん。安定感は抜群。 ©getty

5. エリヴィラ・ナビウリナ

 ウクライナ問題後、一時半分にまで価値が暴落したルーブルの乱高下を辛くもしのぎ切ったロシア中央銀行総裁。金融・経済問題におけるプーチンの右腕的存在。米FRBのイエレン議長よりも就任は早く、G8初の女性中央銀行総裁でもある。今年、英国の金融業界誌「ザ・バンカー」の「中央銀行総裁・オブ・ザ・イヤー」に選出された。出身はウラル山脈南部の町ウファで、民族的にはタタール人にあたる。夫は高等経済学院学長という経済一家だが、以前のインタビューで夫いわく「性格とか全然ちがうんだよね。彼女はドストエフスキーやカフカなんか読んでる人だし、最近はオペラなんか聴き始めちゃってさ」とのこと。

表情豊かで景気の良し悪しが一目瞭然。画像大喜利があったら盛り上がりそう。 ©getty

6. マリア・ザハロワ

 2015年8月からロシア外務省初の女性報道官を務める。昨年5月にソチで行なわれたASEAN首脳会議ではロシアの民族舞踊「カリンカ」を披露。前日に急遽決定し、リハーサルは1回で臨んだと後で告白するも、そのわりにはノリノリで、踊れる報道官として話題になった。ロシアの対外イメージ回復のためにソフトな情報発信を狙う現政権の象徴的存在。フェイスブックではほぼ毎日投稿。外交の舞台裏情報などが好評で、フォロワーは30万人にも上る。インスタグラムでは休暇中の写真や娘の写真、自撮り写真などもよくアップしている。趣味は子どもの頃から続けているドールハウスで、本格的な域にまで達しているのだとか。タバコは吸わないが、月に数回程度シガーを嗜む。

愛車はトヨタ・カムリ。自分で運転するのが好き。 ©時事通信社

7. クセニア・サプチャク

 テレビ司会者、ジャーナリスト、ロシア版「ロフィシエル」誌編集長と肩書き多数。プーチンの政界進出のきっかけを作った元サンクトペテルブルク市長アナトーリー・サプチャクの娘。「ロシアのパリス・ヒルトン」と称されセレブとしてメディアにもてはやされた時期もあったが、2011年12月の下院選不正疑惑を境に、メディア統制を行なうプーチン体制と決別。以降、批判色を強めていき、反政権活動の中心人物として立ち回っているが、自宅に家宅捜索に入られたり、治安当局に拘束されたりといったことも。2015年に起きたボリス・ネムツォフ暗殺事件では、次の標的として脅迫を受けパリに一時避難した。昨年11月、俳優の夫との間に息子を出産している。

ツイッター上での歯に衣着せぬ発言と、おしゃれメガネがトレードマーク。(Facebookより)

8. マリア・コジェブニコワ

 元PLAYBOYモデルから下院議員という異色の経歴の持ち主。プロフィールだけ見ればロシアの蓮舫か。ただし二重国籍ではなく、アイスホッケー選手の父と英語教師の母はともにロシア人。ちなみに、選挙で同時に当選を果たしたのは世界初の女性宇宙飛行士ワレンチナ・テレシコワ(当時74歳)で、日本と遜色ない候補者のバラエティの豊かさが表れている。議員活動と並行して映画、ドラマ、舞台と女優業も精力的に続けていて、2015年公開の映画「バタリオン」では役で丸坊主になり、ロシアの最優秀助演女優賞まで獲得。どちらが本業なのかよくわからない。

2009年にはロシア版PLAYBOYの表紙を飾った。現在は二児の母。(Instagramより)

9. ユリア・リプニツカヤ

 2014年のソチ五輪では15歳ながらフィギュアスケート団体金メダルの原動力に。開催国の面目を保ちご満悦のプーチン大統領に頭をナデナデされる一幕も。その後の数シーズンは、加熱するメディア報道、成長期の体型の変化が影響してかスランプに陥り思うような結果が出せず、18歳となった今シーズンも脚と臀部の怪我に見舞われ大会出場は絶望的に。メドベージェワ、トゥクタミシェワ、ラジオノワ、ポゴリラヤなどなど有望なロシア人選手が大勢ひしめくなか、メディアに悪態をついたり、2位の結果にショックを受け表彰式をスルーしたり、エピソードに事欠かないツンデレ系の彼女をもうしばらく見守りたい。

ソチ五輪の頃のあどけなさは消え、すっかり大人の顔つきに。(Instagramより)

10. ゆめ

 犬ですが、一応メスなので……。東日本大震災時のロシアの支援に対する感謝の気持ちから、秋田県知事がプーチン大統領へ秋田犬を贈呈。「ゆめ」の命名はプーチン大統領によるもの。一時消息不明となっていたが、昨年12月、約3年ぶりに元気な姿を見せた。日本側は婿入れを画策していたが、ロシア側に固辞されあえなく破談に。断ったのは2島と2頭をかけて返還要求されるのを嫌ったからか、それともリュドミラ夫人との熟年離婚後の寂しさをゆめが埋めてくれているからか。2014年に安倍首相がソチを訪問した際にもゆめの出迎えがあったが、プーチン大統領は「たまに噛むから気をつけたほうがいい」との意味深な助言を残している。一国の主たるもの、飼い犬に手を噛まれないよう気をつけたい。

雪の中たわむれるゆめ。奥はブルガリアの首相から贈られた牧羊犬「バフィー」。 ©getty
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