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出口治明氏が考える“最高の国”6つの条件とは?

入門 新世界史 「モンゴル帝国vs.五賢帝ローマ」

 歴史好きなら一度は考えてみるのが、「史上最強の国はどこか?」。エジプトからインドまで版図を広げたアレクサンドロス大王率いるマケドニア、ヨーロッパを席巻したナポレオンのフランス、無敵艦隊を誇ったスペイン帝国とそれを打ち破った大英帝国――。そのとき基準となるのは、戦争の勝敗、領土の広がり、支配力などだろう。

出口治明氏 ©浅沼敦/文藝春秋

 それに対して、歴史上どこが最も「暮らし良い国」だったか、と問いかけるのが、ベストセラー『仕事に効く教養としての世界史』などで知られる出口治明さん(ライフネット生命保険代表取締役会長)だ。

 出口さんが考える、普通の人々にとって「最高の国」の条件は、「人間の素朴で基本的な欲求が満たされている状態」だ。出口さんの言葉を借りれば、「お腹いっぱい食べられて、夜は快適にぐっすり寝られる。カップルが安心して子供を産み、育てられる。好きなところに住み、好きな仕事をして、上司の悪口を思い切り言える」ということになる。

 これを言い換えると、

・お腹いっぱい=豊かさ、GDP
・ぐっすり寝られる=治安の良さ
・子供を産み育てる=人口増
・好きなところに住む、好きな仕事、上司の悪口=移動の自由、職業選択の自由、言論の自由

 というわけだ。

 そして、最新の歴史人口学、歴史統計学、考古学などの進歩によって、そうした過去の人々の暮らしを知るための研究成果が次第に積み上げられてきている、と出口さんは指摘する。

「お腹いっぱい食べられたかどうか?」を明らかにするのは、まず人口の推移。そして考古学的な調査から、当時の人々の体格も推計できる。その結果を踏まえて、出口さんは「江戸時代は平和で豊かな時代」という見方に疑問を呈する。江戸末期の日本人の平均身長は、男性で155センチ、女性で143センチ。これは古墳時代以降の推計値と比較しても日本史上最も貧弱な体格だと考えられている。そうなった根本原因を、出口さんは外国との交易を制限した「鎖国」にあった、と分析する。自分の生活エリアでは産出しない品物を交換し合う交易こそ、豊かさの最重要条件であり、自由な交易や人の行き来の安全を保証するのが「よい国」の基本条件だというのだ。

 このほかにも、歴史の中から現代社会にも通じる原理原則が満載の出口流世界史入門「史上『最高の国』はどこだ? モンゴル帝国VS.五賢帝ローマ」は、『文藝春秋SPECIAL』春号に掲載されている。

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