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担当者が語る『夫のちんぽが入らない』が13万部売れた舞台裏

『夫のちんぽが入らない』(こだま 著)――ベストセラー解剖

2017/03/12
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『夫のちんぽが入らない』(こだま 著)

〈いきなりだが、夫のちんぽが入らない。本気で言っている。交際期間も含めて二十年、この「ちんぽが入らない」問題は、私たちをじわじわと苦しめてきた。〉

 書き出しから心を掴まれる。愛し合いながらも体では繋がれない夫婦。その魂の遍歴を妻の目線から描いた私小説が、刊行直後から増刷を重ね驚きの売れ行きを見せている。同人誌に発表された同名の短いエッセイに編集者が目をとめ、書籍化に向けて動き、改稿を重ね小説の形に昇華した。

「同人誌版と同じタイトルにしたのは、話題づくりのためではありません。むしろこのタイトルを残すことで、売れなくなる可能性の方が大きかった。読者も手に取りにくいだろうし、書店も嫌悪感を示すかもしれない。でも、『普通』という呪いに苦しんだ女性が、『普通に生きなくてもいいんじゃないか』と訴えている本のタイトルを、『普通』に向かう同調圧力に負けて変えるのはおかしな話だと思って、抗ったんです」(担当編集者の髙石智一さん)

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 刊行前に見本を配ると松尾スズキさんを始め各界の著名人が絶賛。書店員からも熱い支持が寄せられた。

「販売部員が熱心に宣伝してくれたお蔭です。関わった人は皆強い思い入れを持ってくれました。作品に力があったから。単にタイトルの話題性で売れた本みたいな扱いになるのは悲しい。これからは静かに少しずつ、読みたい人の手に届けばいいなと思います」(髙石さん)

2017年1月発売。初版3万部。現在4刷13万部

夫のちんぽが入らない

こだま(著)

扶桑社
2017年1月18日 発売

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