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本城 雅人
2017/03/12

WBCへの出場、日本は続けるべきか、やめるべきか

旬選ジャーナル 目利きが選ぶ一推しニュース

▼〈「大谷くんが羨ましい」WBCメンバー中日・岡田が本音?〉『日刊ゲンダイDIGITAL』2月4日

 日本ハム・大谷翔平に代わってソフトバンク・武田翔太が選出された二月四日、日刊ゲンダイDIGITALの「『大谷くんが羨ましい』WBCメンバー中日・岡田が本音?」との記事が目に入った。

「ケガは一番怖いので、(出場を辞退した)大谷くんが羨ましい(笑い)。僕もできたら(辞退)したい」

 落合監督時代に選手を出さなかった中日選手とあってドキリとしたが、岡田俊哉投手は記事中「冗談ですけど」と断りを入れている。本音かはさておき、WBCというイベントは応援するファンとプレーする選手とでは温度差がある。それを理解した上でこのコメントを聞き出した日刊ゲンダイ記者には感心している。

 日本では五輪、サッカーW杯と並ぶ国民的スポーツイベントになったWBCだがオープン戦期間中に開催されるとあり、選手はケガの不安を併せ持っている。第一回ではヤクルト石井弘寿投手が選手生命を失う大ケガを負い、第二回大会では連続MVPを獲得した松坂大輔が以後故障を繰り返すようになった。イチローでさえ第二回大会後に初めて故障者リスト入りするなど“犠牲者”は数多い。

 問題点は他にもある。第一回大会当時、僕はサンスポのデスクだった。キューバに勝って優勝した日はサンスポ史上最多の八頁にわたる賑やかな紙面を作ったが、現地から送られてくる大量の原稿を出稿しながらも違和感は消えなかった。国内はこんなに興奮しているのに現地の盛り上がりが伝わってこない…その時、頭を掠めたのが「サントリーカップ」だった。

 サントリー杯とは、どうしても巨人と試合がしたかったパ・リーグがセを拝み倒して、一九九九年と二〇〇〇年の二年間だけオープン戦期間中に実施された日本プロ野球初の交流戦である。優勝賞金一千万円。巨人戦は全国中継されパ球団は喜んだが、セ球団や選手にとっては所詮オープン戦に過ぎなかった。〇〇年はオリックスが優勝したが、オリックスが日本一とは選手もファンも思わなかった。

 三回中二度日本が優勝しているWBCもそれと似ている。「日本の方がメジャーより上」「日本が世界一」という認識は米国どころか日本国内にもないだろう。

 日本の交流戦は〇五年から公式戦内で再開したが、WBCに時期を変えようとの動きは皆無。メジャー球団は相変わらず非協力的で、準決勝以上は米国で、米国代表は本土から一歩も出ない歪な日程も一回目から同じだ。収益はMLBと選手会ががっぽり搾取しているくせに、WBCは儲からないから今回で終了との報道もちらほら。もう十一年間もメジャーの勝手に振り回されているのだ。

 WBCの盛り上がりが、日本の野球人気に大きく貢献しているのは認める。それでも米国がもうやりたくないと言うなら頭を下げてまで続けてもらう必要はない。むしろ日本がすべきことは国内リーグをMLBと肩を並べる収益システムを持つリーグに変えることだと思う。

 メジャーに並ぶなんて無理? いやサントリー杯が行われていた頃を思い出してほしい。十年余り後にパに巨人を超える富裕球団が存在し、実力でセを圧倒する時代がくるとは思いもしなかったではないか。そのためには経営者出身のコミッショナーが必要だし、韓国、台湾、中国人が日本野球に興味を持つようアジア人枠を作ったり公式戦を現地開催するなど市場拡大をしなくてはならない。

 日本人は力を抜くのが苦手なので、大会が始まれば世界一を目指して戦ってくれるだろう。僕も応援する。ただし球界の幹部は一喜一憂せず、自分たちが次にすべき「ベースボールビジネス」での戦いに向けて準備をしてほしい。

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