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水谷 竹秀
2017/04/03

GACKTに直撃「日本にカジノは必要ですか?」

マニラに和製カジノが出来ていた #3

マニラに現れたあの有名人

 マニラのカジノを訪れる日本人が少ないように、カジノは日本人と縁遠い存在と感じる人もいるかもしれない。ところが日本でも、最近はカジノ愛好家が増えつつある。それを感じさせる場面に遭遇した。

 ディーラーが投げるカードがクルクルと素早く回転してテーブルの上でピタッと止まる。黒い皮ジャンを身に纏い、サングラスを掛けたその男は、2枚配られたところで、両手で包み込むようにカードをのぞき見る。時折、「うーん」と声を出して悩む仕草を見せ、真剣な眼差しが黒いレンズの奥からでも伝わってくるのが分かった。

サングラス姿のアノ人は・・・ ©水谷竹秀

 その男、GACKT(43)は1月中旬、前述の「リゾート・ワールド」で開催されたポーカーの大会に出場していた。彼は日本のポーカー好きからも知られた存在で、相当な腕前だという。出場すると聞いて現場に駆け付けてみたのだ。この日はトーナメント2日目。初日は参加者96人中、なんとトップで通過していた。

トーナメント初日をトップで通過したGACKT ©水谷竹秀

 日本はいま、ポーカーブームである。人気の理由の一つは、自分の実力が分かりやすく勝敗に結びつくという奥深さがあることだ。日本人プレイヤーたちは、世界各国で開催される大会に出場し、中にはそれだけで生計を立てているプロもいる。

 私は休憩中にパイプを吹かしていたGACKTに直撃取材を申し込んだ。カジノ愛好家の代表として、日本版IRの是非について質問をぶつけてみたかったのだ。

「オリンピックの時期に合わせ、日本らしさを活かしながらIRを運営し、観光の呼び水的な役割を担って欲しい。これにともなう産業が広がらないと、日本は経済的に本当にダメになる。依存症を心配する人がいるけど、すでにパチンコや競馬、競輪などのギャンブルは日本国内に存在している。だから依存症を理由に反対するのはおかしい」

 GACKTはそう熱く語ったあと、休憩時間の終了が迫ってきたため会場へ戻っていった。

勝った経験から依存症に

完成すると全部で3千台に達するスロットマシーン ©水谷竹秀

「ピクチャー!!」

「プータン・イナ・モ!!」

 テーブルゲームで高揚したフィリピン人客からよく発せられる言葉だ。特に客が勝ち続けているテーブルの周りには勝ち馬に乗ろうと黒山の人だかりができ、それら掛け声とともに場は一層盛り上がる。

「ピクチャー」とはトランプの絵札のことで、ディーラーが絵札を引いたら負けが確定する場面で彼らが祈るようにそう叫ぶのだ。後者は麻薬撲滅戦争を米国に非難されたドゥテルテ大統領が記者会見で、オバマ前大統領に対してののしった言葉である。直接的な意味は「お前の母さん売春婦」となるが、日本流にたとえると「チクショウ」が適当だろう。

 お金を賭けているから当然、熱くなるのは仕方がない。しかし、ギャンブル依存症となると話は別だ。

 米カリフォルニア州に本部を置く支援団体「ギャンブラーズ・アノニマス」のフィリピン支部代表を務めるレーガン・プラフェロサさん(36)は、依存症の人々の立ち直りを支援する活動をしている。自身もラスベガスを旅行中、1万8000ドル勝った経験から抜け出せなくなった。フィリピンに戻るとカジノに通い始めたが、負けが込んで車や貴金属などを売り飛ばし、妻の貯金にも手を出した。

「以前はギャンブル嫌いだったが、大当たりしてから取り憑かれたように狂った。家族に止められ、最終的には病院の精神科に連れて行かれた。回復するまでに1年かかった」

 フィリピンの娯楽賭博公社によると、家族の要請で本人の入場を禁止する制度はあるが、それほど活用されていないのが実情だ。レーガンさんは言葉を継いだ。

「私が出会った依存者の中には、その後、自殺した人もいる。入場禁止だけでは不十分で、シンガポールのように規制を設けるべきだ」

 2010年に二大IRがオープンして大成功を収めたシンガポールでは、自国民の入場には100シンガポールドルが課せられるため、よほどのカジノ好きではない限り利用しない環境が整っている。

日中は黄金に光り輝くオカダマニラの外観 ©水谷竹秀

入場規制を設けるべきか

 日本にカジノができた場合、入場に規制を設けるべきだろうか。現在、入場料を課すシンガポール方式と自国民は入場できない韓国方式の両案が検討されている。

 日本で合法的に行われているパチンコや競馬とは異なり、ほぼ瞬間的に勝ち負けが決まるスピード感覚を味わえるのがカジノだ。そこが決定的に違う。賭け事には縁遠かった私ですら引き込まれた。そこが魅力でもあり、逆に危険でもある。

 24時間営業のこんな施設が自分の街に現れたら……。確かに経済を活性化し、雇用創出につながる観光資源としてカジノは選択肢の一つだろう。しかし、日本社会に経済効果では測れない負の要素をもたらす可能性もある。

 オカダマニラのカジノフロアは日々拡大している。週末になると、受付カウンターに行列ができるほどの賑わいだ。スタッフの1人は「『おもてなし』と『まごころ』のサービスを提供したい」と意気込む。間もなく屋内ビーチやホテルが完成すれば、日本のカジノがより具体的にイメージできるはずだ。

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