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【楽天】ゆで卵片手に始球式して怒られそうになった話

文春野球コラム ペナントレース2017

始球式が決まった飲み会での口約束

 3月14日、明石トーカロ球場で行われた楽天vs広島のオープン戦にて、私かみじょうたけし、なんと始球式をやらせていただきました!

3回目の始球式に向けて意気込み十分 ©かみじょうたけし

 記念すべき“初”始球式と言いたい所ですが、実は3月に明石トーカロ球場で行われる楽天戦の始球式は今年で3年連続3回目を数え、僕にとってこの時期にかかせない恒例行事になりつつあるのです。きっかけは、ある会社の社長さんとの飲み会でした。ラジオ番組で出会い、「飯でもどうですか?」と誘っていただいたのだ。

社長「かみじょうさんは高校野球好きですが、プロ野球は観ますか?」

かみ「野球好きなので、勿論プロ野球も観ますよ」

社長「やっぱり阪神ファンですか?」

かみ「いや、楽天ファンなんです」

社長「えっ……本当に楽天ですか?」

かみ「はい、なんかダメでしょか!」

社長「いや、違うんです! よかったら始球式やりませんか?」

かみ「えっ……」

 実は毎年3月にその会社がメインスポンサーとなり、明石で楽天の試合を開催しているというのです。しかも、このままだと社長自身が代表として始球式をしなくてはならないらしく、あまり目立ちたがらない社長は誰か投げてくれる人を探していたというのだ。

「僕で良ければ是非やらせて下さい!」

 そんな飲み会の口約束で始まった始球式1年目、普通に投げるなら地元の少年野球団が投げればいい。芸人がやる意義は? そう、きっと盛り上げてほしいはず! グローブの中に白球とゆで卵をスタンバイさせた僕は、ベンチのデーブ大久保監督に挨拶をすませ、今か今かと出番を待っていた。球審がゆっくり僕に近づいてきたその時、僕の横に立っていた背広を着た人(きっとイベントを仕切っている方)から一言。

「グローブの中のゆで卵で何するつもりですか?」

「あっ、これですかぁ? ボールとゆで卵を間違う板東英二さんのモノマネですわぁ!」

「いや、始球式ですから、マウンドでボール投げて終わりです」

「えっ……」

「マイクもありませんし、ボール投げて終わりで大丈夫です」

「えっ……」

そうこうしてたら球審が

「マウンドまでよろしくお願いいたします!」

 ちょっと待ってくれ、どういう事や。ボケたらあかんのん? 長谷部さーん、心整ってないよー! おーい!

 もちろん球審は待ってくれる訳もなく、気づけばマウンドに立っていた。

「プレイボール!」

 僕は白球とゆで卵がおさまったグローブを顔の前に持っていき、一塁ベンチ前にいる背広の人を見た。わかってるよね? と言わんばかりの表情でこちらを見つめる背広。よし! いらんことしてイベントに迷惑かけるのだけはやっぱりやめておこう! そう思った僕は白球を握りしめ、降りかぶろうとした。