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横田 増生
2017/03/23

ヤマト働き方改革 問われている労組の存在意義

巨額の未払い残業代を支払いへ ©共同通信社

 3月16日、ヤマト運輸の労使交渉が妥結した。大口荷主への値上げ要請や総量抑制、一部の時間帯指定廃止、再配達受け付け時間の前倒し、勤務間のインターバル規制など、“働き方改革”の中身はメディアで大きく報じられた。

 だが、首都圏の現役ドライバーである佐竹誠二氏(仮名)は、こう語る。

「これでは現場の負担はほとんど減りません。私の場合、1日の総持ち出し個数が平均150個です。定められた1時間の休憩をとって、時間指定通りに配達するには、120個に減らないと不可能です」

 従業員たちの過酷な労働実態を解消する方法は2つしかない。1つは、取扱個数を減らすことだ。

 つまり総量抑制だが、事はそう簡単ではない。

 ヤマトは2013年秋、クール宅急便を常温で仕分けした問題が発覚した。その際、改善策として、現場の負担軽減のため、受け入れ総量の規制と運賃の適正化を掲げたが、結局、荷物数は増えていった。ヤマトのドライバーたちには、その記憶が鮮明に残っている。

 もう1つは、ドライバーの数を増やすことだ。ヤマトの荷物取扱個数は年間18億個超。現状の個数が減らないと仮定すると、約5万4千人いるドライバーを6万人強に増やせば、現場の負担はかなり軽減される。しかし、人件費増に直結し、収益を圧迫することから、会社側はドライバー増に前向きではない。

 こうした事情から、労使の合意項目は、弥縫策にすぎない「努力目標」が並ぶ形になった。中国地方のドライバー前田信夫氏(仮名)は、労使交渉をこう総括する。

「組合への信頼がゼロになりました。もう労組に相談する気持ちにもなりません」

 というのは、従業員の駆け込み寺として労組が機能していたとは言い難い現状がある。

 今回、ヤマトが全社的な未払い残業代の支払いに踏み切らざるを得なくなったのは、2016年に退社した2人の元ドライバーの告発がきっかけだった。彼らは「労組を信頼できない」として、自ら弁護士を立て、労働審判の場で未払い残業代の支払いを要求したのだ。

 今回の合意が、本当に労働問題解決につながるのか。会社だけでなく、労組もその存在意義を問われている。

文春オンラインでは、ジャーナリストの横田増生氏とともに、継続して日本の物流の「いま」、日本企業の「働き方改革」を取材します。

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